「高速バス通勤」の実態とは 住宅街から座って都心へ 理想的スタイルは現実的か

東京以外でも見られる「高速バス通勤」 回送を有効利用した例も

 東京以外の都市でも、通勤利用をおもなターゲットにした高速バス路線は数多く運行されています。たとえば、愛知県豊田市や三重県桑名市郊外の住宅地から名古屋都心、京都府京田辺市の住宅地から京都および大阪都心などへの路線です。このほか、山形と仙台のように県庁所在地どうしを結ぶ都市間路線でも、鉄道より速くて運賃も安いことから通勤利用が目立つ路線もあります。

 神戸市の郊外にあたる垂水区の住宅地から、都心の三宮に向かう路線も、増便を繰り返している人気路線ですが、この路線は誕生の経緯がユニークです。

 山陽バス(当時は山陽電鉄の自動車営業本部)は1998(平成10)年、明石海峡大橋の開通と同時に三宮と徳島を結ぶ高速バスの運行を開始しました。同社の営業所(車庫)は垂水区にあるので、そこから三宮のバスターミナルまでバスを回送したうえで、徳島行きとして運行していました。営業所の周囲は新興住宅地で三宮に通勤する人が多く住んでおり、同社の路線バスと鉄道を乗り継いで通勤をしていたので、「どうせ車両を回送するなら、運賃をいただいて営業運転しよう」と考えたのが、誕生のきっかけといわれています。乗り換えが不要なうえ、リクライニングシートに必ず座れることから予想外の人気となり、高速バス車両をわざわざ増備して増便を繰り返す「ドル箱路線」に成長しました。

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木更津金田バスターミナル。方面別に10の乗降場が設けられている(画像:pixta)。

 この路線のほか、前出の豊田市、桑名市などの路線は、郊外の住宅地内できめ細かく停車してから都心へ向かいます。一方、木更津金田バスターミナルのように、巨大な「パークアンドライド駐車場」が乗り場に隣接し、マイカーから高速バスへの乗り換えに便宜を図っているケースも。環境のいい郊外に住み、自宅の前から、あるいはマイカーでバスターミナルまで向かい、高速バスに乗り込めば、あとはリクライニングシートでくつろいでいるうちに都心へ到着している――理想的な通勤スタイルのひとつと言っていいのではないでしょうか。

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コメント

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17件のコメント

  1. 確かにアクアラインのバスは本数も多く、平日でも心配するほど遅れないと聞いているが、あの本数をいつまで維持できるだろうか。
    運転士不足のしわ寄せがいずれ?

  2. 記事末にある田園都市線あざみ野駅→東名江田バス停はMAP上では近く見えるけど、ほぼ”山越え”と言って差し支えない丘超えになるルートなので、健脚な人にしかおすすめできないが・・・電車が事故で止まったときの都心方向への回避ルートとしては良いかもしれないね。

    江田バス停近くにはマンションが数棟あるけど、そこの住民はこのバス停よく利用してる。近年の田園都市線は朝夕激混みだし事故遅延も多いからね。

  3. 東名江田から東京方面は降車専用じゃないのかなぁ

    • JRの東名ハイウェイバスと小田急箱根高速バスなら上下とも乗降OKだ。

  4. すげー本数ですな、配車係も駆り出されるんじゃな~い?

    • 勝った負けたという話ではないですが、
      東京近郊なら東京駅~茨城県方面もなかなかですよ。
      昔は『つくば号』が一番でしたが、
      つくばエクスプレス開業で後退して、
      東京発着で一番多いとされる、
      かしま号の約80往復(ダイヤ改正で便数は前後するため)、
      みと号の約55往復などと。

      ちなみに、日本全国に広げると、
      凄まじいのが福岡(博多)発着。
      経由地などは若干異なるものの
      西鉄バスの福北高速(福岡と北九州)系統で約125往復。
      ひのくに号(福岡~熊本)約100往復。
      などと桁違いです。

    • 西鉄の運転士が慢性的に不足するワケだな・・・。

  5. 東京湾アクアラインには、国と千葉県から税金が投入されて、通行料金が割安になっています。利用機会の無い者からすると、不公平です。

    • 私もアクアラインはほとんど走りませんが、千葉県民には貨物と物流の面でも大きなメリットがあるので間接的に恩恵は受けてますよ。

  6. 昔、東名向ヶ丘が家から近くて試しに使ってみたことがある。運賃は田園都市線+地下鉄と大して変わらないんだけど、都心のバス停が霞が関と東京駅しかないから、結局乗り換えが必要になって高くつくんだよな。
    東急が安いのもあるから、JR沿線で似たような環境なら違うかもしれないけど。

    あと首都高を走る高速バスに乗ると、橋脚の継ぎ目ごとにガタガタ揺れて、意外に乗り心地が悪い。

    まあ神姫バスの高速バスが粟生線を潰す一歩手前まで来ていることからすれば、定時性が確保できれば通勤用高速バスは強い。パークアンドライドも田舎の幹線道路沿いで安く土地を確保できるし。

  7. 田園都市線から高速バス通勤を語るなら、東急Eライナーをぜひ。

    • いくら座れるといっても、渋谷までで毎日720円というのはね…
      しかも予約できないから、後半のバス停からは乗れるかどうかの不安がつきまとうし
      お金にも時間にもかなり余裕のある人じゃないと…

    • 交通ICが使えるとあって、そこそこ乗ってるよ。毎日利用する客はさすがにいないだろうが、たまにはという客が結構乗る。
      首都高3号の渋滞に付き合わなければならんが、田都の超殺人的なすし詰め電車に詰め込まれることを考えると、十二分にアリなのだよ。

  8. あくまで東京中心に見た考えに過ぎない。

    高速バスで通勤が当然の地方も多い。
    あまりに見方が偏っている。

    • 直接編集部に乗り込んで抗議されたい。
      畿内の事情は何故に無視か、とでも。

    • 前に東洋経済が「アーバンパークライン」が定着したのかという記事で、不動産会社のサイトで定着度の有無を論じていたな。「琵琶湖線」は大手サイトで登録されてないから不動産の世界では定着していないんだとさ。そこそこ有名な経済誌ですらその程度。東日本大震災の際に全国ネットでロマンスカーの運行情報をやってたテレビのキー局病と同じ。

      ここはそれに加えてせっかく列車に乗ったと思ったら日記だし。

  9. 房総地区からの高速バスが増えているのは総武線がそこまで便利じゃないから。
    総武線で行けるのはせいぜい、東京駅や品川駅までだろう。
    それにアクアラインの平日は高速バス以外は殆ど通行していない訳だし、高速バス料金の方が総武線経由より安上がりで早いのが要因だと思う。
    総武線はそろそろ、りんかい線をJRにしないと房総特急が全滅するのも時間の問題になると思います。
    房総特急の復活にはりんかい線のJR化が必要に思えます。