「パナマ船籍」なぜ多い 船籍をあえて外国へ 世界をまたにかける外航海運業の戦略とは
「日本船籍」復活の動きも
このように昔から行われてきた便宜置籍ですが、最近は日本籍の船も増えているそうです。日本郵船は次のように話します。
「外航海運は『世界単一市場』で厳しい競争に勝ち抜く必要があり、便宜置籍国への船籍登録は今後も継続していくと考えられます。一方、安定的な海上輸送の確保という観点から、日本の外航船舶運航事業者が国際的な競争力を確保しつつ、日本船舶および日本人船員の計画的な増加を図ることも重要な課題です。外航海運に対する課税の特例である『トン数標準税制』が2008(平成20)年に導入されていることから、日本籍船も今後増加させていく予定です」(日本郵船)
「トン数標準税制」とは、実際の利益に応じてではなく、船舶の大きさを基準として、一定かつ低水準の「みなし益」を設定して課税する制度です。適用を受ける事業者は、日本籍の船や日本人船員を増やす目標を明記した「日本船舶・船員確保計画」を作成し、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。1970年代以来減少し続けていた日本の外航海運会社における日本籍船の割合は、この制度が導入された2008(平成20)年から増加に転じ、8年間で3.7%から9.1%まで上昇しています。
一方で日本郵船によると、便宜置籍国はビジネスとして自国籍船の誘致を行っており、特にパナマ、リベリア、マーシャル諸島が力を入れているとのこと。「コスト面のみならず、サービスの充実に各国ともしのぎを削っているような状況です」と話します。また、便宜置籍はクルーズ船など旅客船でも行われ、特にカリブ海の諸島国であるバハマ籍が多いようだといいます。
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タックスヘイブンを許さない国際システムを築こう