姫路モノレール「大将軍駅」その後どうなった? 高層ビルを貫くユニークな駅(写真63枚)

未来の都市交通として注目を浴びながら、利用者が少なくすぐに廃止されてしまった兵庫県姫路市のモノレール。高層ビルの内部にプラットホームを設けたユニークな駅はいま、どうなっているのでしょうか。

わずか2年で休止した駅

 兵庫県の姫路市には、国宝に指定されている姫路城があることで知られています。2016年8月、その姫路城の天守閣から南西約1.5kmの地点にある高層ビルが、大きな話題になりました。その名は「高尾アパート」。別名を「大将軍駅」といいます。

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姫路市内にあった高尾アパート。3~4階の内部にモノレールの駅が設けられていた(2016年8月、草町義和撮影)。

 高尾アパートは1966(昭和41)年に建設された、10階建ての公団住宅です。といっても1階と2階には商業施設が設けられ、実際に賃貸住宅が設けられたのは5階から10階まででした。

 そして3~4階の部分には、姫路市交通局が運営するモノレール(姫路モノレール)の大将軍駅を設置。ビルの内部を貫くようにしてモノレールの線路とホームが設けられていたという、ひじょうにユニークな構造でした。モノレールも高尾アパートと同じ時期に建設され、1966(昭和41)年に姫路~手柄山間の1.6kmが開業。大将軍駅はその途中にある、姫路モノレール唯一の中間駅だったのです。

 しかし、その気になれば歩いても行ける短い距離だったうえに、運賃もほかの交通機関に比べて高く、1年間の利用者数は当初の想定(100万人)を大幅に下回る約20~40万人台で推移。とくに大将軍駅は国鉄の姫路駅や山陽電鉄の山陽姫路駅から約500mしか離れていなかったため、この駅を利用する人はほとんどいなかったといいます。

 このため、100円の収入を得るために300~400円程度の経費がかかるという赤字経営に。開業からわずか2年後の1968(昭和43)年には大将軍駅の営業を休止していますが、それでも経営が好転することはありませんでした。結局、1974(昭和49)年に営業を休止し、1979(昭和54)年には正式に廃止されました。

 モノレールの施設のほとんどは廃止後もそのまま残され、高尾アパートも大将軍駅の施設を除いて商業施設と賃貸住宅が入るビルとして使われ続けました。そして時がたつにつれ、「レトロな産業遺産」として注目を集めるようになったのです。

実は「地面の下」にまだ残る

 しかし、1990年代の末期には老朽化で耐震性に問題があると考えられるようになり、2013年に解体が正式に決定。解体工事に入る直前の2016年8月、大将軍駅の施設の見学会が行われたのです。駅の休止から48年ぶりの公開、しかも解体工事が間近に迫っていたこともあり、見学会への申し込みが殺到。競争率は10倍以上になったといいます。

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手柄山駅はモノレールの展示施設として再整備された(2018年8月、草町義和撮影)。

 見学会の実施から2年が経過し、高尾アパートはどうなったのでしょうか。2018年8月11日(土)に現地を訪ねたところ、すでに解体工事は終了しており、アパートの構造物は完全に消滅。地面はアスファルトで舗装され、何も残っていませんでした。

 しかし、見た目には完全に解体されていますが、実は高尾アパートの基礎として使われていた鋼製の杭(くい)が、いまも200本近く地面の下に残っています。2017年9月から杭の撤去作業が始まりましたが、杭を抜くための機械が破損。そこで、杭を揺らして抜き取る工事方法を使って何本が抜くことができましたが、途中で曲がっている杭や、最初から斜めに打ち込まれていた杭があったといいます。これでは簡単に撤去できません。

 振動させて杭を抜く方法を使い続けると、周辺の住宅まで揺れて損壊する可能性があったため、姫路市は杭の撤去を断念。跡地に新しいビルやマンションなどを建設することは難しくなってしまいました。姫路市はとりあえず駐車場などに使うことを考えているようです。

 ちなみに、高尾アパート以外の施設はいまも少し残っています。姫路~大将軍間はモノレールの桁こそ撤去されていますが、橋脚はほとんど残存。橋脚の下側を取り囲むようにして民家や商店などが整備されたため、民家や商店の屋上から橋脚が伸びていて、まるで煙突のように見えます。

 大将軍~手柄山間も、ほかの鉄道線路や道路との交差部分こそ撤去されていますが、それ以外の多くは高架橋の桁と橋脚が点在して残っています。そして終点の手柄山駅はモノレールの展示施設として再整備され、2011(平成23)年にオープンしました。4両あった車両のうち2両が展示されていて、誰でも無料で見学できます。

【了】

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Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)

鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。

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コメント

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3件のコメント

  1. 国鉄の姫路駅と表するならば、山陽電鉄は山陽姫路駅ではなく電鉄姫路駅となるはず。

  2. 某ジャパッシュという劇画で土地を買収する必要のないモノレールなんて言ってたが、現実は厳しかった。
    方式がたくさんあって、規格化されてなく諸々の単価が高くなるのも理由の一つに思える。

  3. 姫路市は好立地の再開発を考えていたでしょうが
    当てが完全に外れたというところでしょうね