【空から撮った鉄道】意外とタイミングが難しい、湖上を走る東海道新幹線

東海道新幹線は浜松から西へ進むと、海に沿いながら浜名湖を渡ります。浜名湖に架かる橋は入江にあり、ほんの一瞬で過ぎ去る車窓には湖と太平洋が望めます。今回は、この浜名湖に架かる橋の空撮をお話ししましょう。

浜名湖は、湖を通過する東海道新幹線唯一の場所

 東海道新幹線の東京~新大阪間は、大小さまざまな河川を渡ります。そのなかで唯一、湖を渡るのが浜名湖です。浜名湖は太平洋と繋がる汽水湖で、面積は約65平方キロメートル。日本で10番目の広さを誇り、静岡県では一番大きな湖です。

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「第二浜名橋梁」を通過するN700系。画面左手には東海道本線の弁天島駅が見える(2013年1月9日、吉永陽一撮影)。

 浜名湖は浜松駅の西側に位置し、海岸線と繋がっていて行く手を阻みます。明治のころ、東海道本線は海岸線に沿い、湖と海岸線が繋がるわずかな入江部分に敷設されました。

 やがて時代は下り、東海道新幹線を敷設する際も東海道本線をなぞるルートを選び、同じくわずかな入江部分に線路が敷設され、「第一浜名橋梁」「第二浜名橋梁」、そして約500mの長さの「第三浜名橋梁」と呼ばれる橋梁で浜名湖を渡っています。

 この区間は「のぞみ」だと270km/hで疾走します。湖と太平洋が見えるのは数秒の世界で、あっという間です。

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「第三浜名橋梁」を真上から撮影。真ん中の東海道本線の橋梁が直線であるのに対し、その上の東海道新幹線の橋梁は曲線を描く。また、東海道本線の橋梁のすぐ上側には、明治時代に架橋された旧橋梁の橋台跡が、等間隔に並ぶ姿が確認できる。旧橋梁は1953(昭和28)年に現在の橋梁へと架け替えられた(2013年1月9日、吉永陽一撮影)。

“一瞬”なのは上空でも同じです。「のぞみ」がこの橋を渡るときも、あっという間ですが、南側から望めば浜名湖の雄大な湖面が、北側からでは太平洋の海原が逆光でキラキラと輝き、東海道新幹線に大自然の彩りを与えてくれます。刹那の美しい光景を狙うため、何年かに一回は浜名湖を行く新幹線を空撮しているのです。

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紺碧の湖面と白い車体のN700系が、鮮やかな光景を作り出す(2009年11月18日、吉永陽一撮影)。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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