沖縄配備か陸自最新の地対空ミサイル「03式中SAM改」その性能は 守備能力どう上がる?
高性能だけど低価格なのも重要
また、この対処時間短縮に貢献しているのが、ミサイルの垂直発射システムです。これは、たとえば前述のペトリオットの発射機、いわゆるランチャーが、射撃姿勢は斜めで発射機は旋回式なのに対し、03式中SAM改および原型の03式中SAMは、発射機は垂直に立ち回転しません。
これにより、射撃時は目標方向に対して発射機を回さずにミサイルを上方向に射出し、その後ミサイル自身が目標に向かって飛んでいくことで、発見から撃破までの対処時間を短くしています。
また垂直射出には、周囲に建物などがあってもミサイルの飛翔ルートが制限されにくいというメリットもあります。これにより、都市部や山間部など見通しのあまりきかない場所にも布陣することが可能で、敵の攻撃を受けにくい、発射機を隠蔽しやすいというメリットにもつながります。
さらに03式中SAM改は、上述したような原型03式中SAMからの改良点以外にもポイントがあります。それは調達コストの低減で、原型よりも取得単価が安くなっています。
このコスト低減は、03式中SAM改の開発の要旨にもうたわれていました。原型の03式中SAMは高性能ゆえの高コストから、毎年度少数ずつでの導入に留まり、調達開始から10年以上経っても首都圏や近畿圏、九州、沖縄などにしか配備できていません。北海道や東北などを中心に、いまだ約半分の部隊が旧式化した「ホーク」地対空ミサイルを運用しています。
03式中SAM改は民生品を多用し、専用システムを最小限にすることでコスト低減を図っており、陸上自衛隊としてはこれで古い「ホーク」を一気に更新したい目論見もあるようです。
【了】
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
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