イランはなぜ軍隊がふたつ? 国軍とは別に陸海空戦力を揃えるイスラム革命防衛隊とは

国外にも拡大した革命防衛隊の活動 そして暗殺事件へ

 ちなみに革命防衛隊空軍のSu-22は元々イラク空軍の保有機でしたが、1991(平成3)年の湾岸戦争時に多国籍軍の爆撃から逃れるためイランへ逃亡した機であり、戦後イラクの返還要請を拒否しそのまま接収したものです。同様にSu-25も接収し保有していましたが、こちらは最近イラクへ返還されています。

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2019年6月、ホルムズ海峡で攻撃を受けたケミカルタンカー「コクカ・カレイジャス」。左の矢印の先は損傷部、右の矢印の先は機雷と見られるもの(画像:アメリカ海軍)。

 革命防衛隊と日本との関わりにおいては2019年6月13日、ホルムズ海峡において発生した日本の海運会社国華産業が保有する石油タンカー「コクカ・カレイジャス」爆破事件があります。一部不発だった吸着機雷を回収する革命防衛隊海軍の様子が、アメリカ軍哨戒機によって撮影されていますが、イラン側は公式に関与を否定しています。

 以上のように、革命防衛隊は本来の目的である国内の治安維持や共和国軍への備えという枠組みを超え、事実上のもうひとつの軍として機能しています。そして合法、非合法問わない軍事作戦を実行しており、暗殺されたソレイマニ将軍は外国におけるテロ活動の中心的人物であった(と、アメリカはみなしていた)ことが、ターゲットとなった理由であると見られます。

【了】

【写真】革命防衛隊も保有するSu-22(同型機)

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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