阪神高速「約3年通行止め」→「前倒し開通!!」年末の繁忙期も変わる! 「松原線・喜連瓜破」工期短縮を可能にした技術と“ご理解”〈PR〉
阪神高速14号松原線「喜連瓜破~三宅JCT間」で、長期間にわたる通行止めを伴って行われている橋の架替え工事。2024年10月、待ちに待った通行再開についてのお知らせがありました。当初の予定よりも約4カ月も早い工期短縮を実現できたのは、なぜなのでしょうか。
待ちに待った再開!「阪神高速14号松原線 喜連瓜破」大幅工期短縮で開通
阪神高速が2022年6月から進めてきた「14号松原線 喜連瓜破付近橋梁架替え工事」に伴う通行止めが終了し、2024年12月7日午前5時の通行再開が決まりました。これは当初の予定よりも約4カ月早い工事完了となります。
この橋がまたぐ「瓜破交差点」(大阪市平野区)は、対向7車線(右折レーン含む)の長居公園通を渡ることから、十分な橋長が必要でした。そのため約40年前の松原線建設時は、南北からコンクリート製の橋桁を、交差点上空でヒンジ型式の継ぎ目でつなぐという、当時として一般的な構造を採用しました。
ところが開通後、経年によりヒンジ部を中心に設計時の想定を上回る“垂れ下がり”が発生してしまいます。その対策として、橋桁の下部に設置したケーブルを両側から引っ張って補強し、点検調査を継続しながら安全に走行できるよう管理していました。
さらに、長期の健全性・耐久性を確保するための抜本的な解決として架替え工事が検討されました。しかし単に架替え工事を行うと、14号松原線を利用するクルマ、さらには周辺の一般道を含めた交通の状況に大きな影響が出ることは避けられません。
そこで工事のタイミングとして選ばれたのが、14号松原線の南部と大阪湾岸を結ぶ「6号大和川線」が全通し、阪神高速のネットワークにおいて松原線の代替ルートとして機能するようになった2020年3月以降です。
「通行止め」が最善 う回路を整えれば
具体的な施工方式は、工事箇所の両側に片側1車線の仮設う回路を設置して工事する「う回路案」、既設の橋の上下線のどちらかを対面交通としてもう片方の撤去と更新を進める「半断面施工案」、そして本線そのものを通行止めにして上下線一括で撤去、更新を行う「通行止め案」の計3案が検討されました。
そして、最終的に工期がもっとも短く、14号松原線直下の一般道部分に影響が少ない通行止め案が採用されることになります。
工事通行止めの期間は、利用者の負担増を避け、かつ交通量の分散を図るためさまざまな施策が取られました。
例えば、大阪都心から松原JCTまで、ETC通行で16号大阪港線~6号大和川線、13号東大阪線~近畿道、12号守口線~近畿道のいずれかをう回しても、14号松原線を使った場合の料金と同額とする料金調整の導入、14号松原線の駒川出入口/喜連瓜破出入口と6号大和川線三宅西出入口の間で一般道を経由しても、3時間以内であれば連続利用とみなす「う回乗継」の設定といった施策が実施されました。
(※料金調整と「う回乗継」は2024年12月7日(土)午前5時をもって終了)
工事中は橋の上に「仮設桁」「撤去」「架設」 3つの工程を支えるもう一つの“橋”があった!?
工事は既存の橋を"撤去"し、新しい橋を"架設"する必要があります。既存の橋を撤去するため、まず現状の高速道路の上部に移動作業車が行き来するレールとなるもう一つの“橋”「仮設桁」の敷設が行われました。
その後、移動作業車が既設のコンクリート橋を両側からバランスをとりながら分割、切断して、徐々に取り除いていきました。
そして撤去終了後に、高速道路上で組み立てられた鋼製の橋桁を両側から送り出すように架設しました。
最後に施工ヤードで組み立てられた中央部の橋桁を多軸台車で運び、運搬・回転・吊り上げ設備によって、一本の橋梁(きょうりょう)が完成することとなります。
この最後の架設作業が行われたのは2024年9月14日で、以降は利用再開に向け、舗装や付属構造物の設置などの工事が続きました。
利用再開が約4カ月も前倒しになった理由
では、当初予定されていた2025年3月末の利用再開見込みが、なぜ約4カ月も前倒しできたのでしょうか。
ひとつは、工法の工夫です。阪神高速は工事期間の途中でも、14号松原線の通行止めによる交通への影響をできるだけ小さくするため、工期を短縮できる方法を取り入れていったといいます。
まず作業用の仮設桁の設置については、当初工事箇所に隣接する橋梁上で組み立ててから送り出す手順を想定していましたが、現地調査および詳細設計の結果、高速道路上のクレーンにより直接敷設する方法に変更しました。
また、既設橋桁の撤去作業は低騒音型の撤去工法である「ダイヤモンドワイヤーソー」や、特殊な防音資材の採用により、昼間だけでなく夜間の作業も最大限に実施されました。これは特に、後述するように地域住民の理解を得られたことが背景にあります。
既設の橋桁を撤去した後の仮設桁の撤去も、当初は上下線別々に隣接橋梁へ引き戻してから解体する予定でしたが、隣接橋梁上での重機配置を見直すことで、より短い工期で可能な上下線一括での引き戻し工法を採用しました。
さらに新設する橋脚は、当初計画していた多軸台車による複数日に分けての架設を、新設橋脚の構築範囲の精査により軽量化が実現したことなどで、クレーンによる一夜間での一括架設としました。
こうした工事内容の精査、手法の見直しの積み重ねで、高い安全性を保ったまま工期の大幅な前倒しが可能となったのです。
“ご理解”なくてはあり得なかった「前倒し開通」
加えてその背景に、地域にお住まいの方や商店の方などへの積極的な情報公開と十分なコミュニケーションがあったことも見逃せません。
工事開始にあたっては、その必要性を広く知ってもらうためチラシの作成と配布が行われました。そして着工後は、工事に伴って発生する”音”を体感していただくイベントや工事の進捗状況をご報告するイベントを開催。さらに工事現場となる瓜破交差点南東角に「喜連瓜破橋大規模更新工事 情報館」を開設し、工事の詳しい状況を逐一広報しました。
こうした積極的かつ地道な努力が、地域住民の安心と信頼感につながったといえるでしょう。大規模な工事で起こりがちな、工事騒音等に関する苦情も少なく、夜間工事もスムーズに実施できたことで、工事の短縮に繋がったということです。
年末の繁忙期に間に合い、余裕をもって万博へ!
さて、今回の工期の短縮による早期の交通再開は、慌ただしい年末、そして2025年4月から始まる大阪・関西万博を控える大阪の街に、プラスの効果をもたらすことになります。
これから交通量の増える年末にかけては、再び機能するようになった松原線が、これまでう回路となっていた大和川線および近畿自動車道と一体の道路ネットワークとして機能することで、高速道路ネットワーク全体のクルマの流れがよりスムーズになると考えられます。
さらに当初の予定では、通行再開が大阪・関西万博開幕の直前であったことから、長期の通行止めによる“交通流の偏り”が完全に解消しない状態で万博開催を迎える予定でした。交通流の偏りを抱えたまま万博開催を迎えた場合、さらなる交通流の乱れを引き起こす危険性がありました。
今回、万博開幕まで約4カ月を残しての通行再開となったことで、長期の通行止めに伴う交通流の偏りが解消された状態で万博を迎えられ、また、万博期間中の経路の選択を検討するための、十分な時間が確保されたのではないでしょうか。
【了】
Writer: 植村祐介(ライター&プランナー)
1966年、福岡県生まれ。自動車専門誌編集部勤務を経て独立。クルマ、PC、マリン&ウインタースポーツ、国内外の旅行など多彩な趣味を通し積み重ねた経験と人脈、知的探究心がセールスポイント。カーライフ系、ニュース&エンタメ系、インタビュー記事執筆のほか、主にIT&通信分野でのB2Bウェブサイトの企画立案、制作、原稿執筆なども手がける。