成田空港の管制塔 なぜ3本? 実は国内唯一「ユニークづくしな運用」が関係 その経緯
「ランプの国内唯一」はこれだけじゃない 一番古い管制塔から振り返る歴史
このランプ、世界でも例のない会社が担当している管制施設です。アメリカなどでは管制官が民間人という場合もあるそうですが、少なくとも日本では国家公務員である国土交通省航空局の職員、もしくは自衛隊員が管制官が担当するのが一般的です。
ところがこの「ナリタ・ランプ」だけは、同空港を運営するNAA(成田国際空港)の社員が地上管制を担当しているのです。
実は、成田国際空港が、新東京国際空港として開港した1978(昭和53)年当時、管制塔はひとつでした。塔内には、最上階に航空局の「タワー」と「グラウンド・コントロール」が配置され、その下の階にNAAの「ランプ・コントロール」がありました。
その後、成田空港は規模を拡大し、第2ターミナルやB滑走路を運用開始させます。これに対応すべく、1993(平成5)年に航空局が管理ビルのもう一端に新管制塔を設置し、そちらに移動。旧管制塔はNAAが単独でランプタワーとして使うことになり、成田の管制塔は2本立てになりました。もしかすると、最初から2本立てにするという案もあったのかもしれません。
しかし開港以来40年以上使用した旧管制塔は老朽化。地震への耐性も懸念されたことから、時代に合わせ免震構造を取り入れた「ランプセントラルタワー」を新設し、2020年9月から、そちらを使っています。このため、2021年に予定されている旧管制塔の取り壊しまでのあいだ限定で、成田空港では3本の管制塔が存在するのです。
ちなみに、筆者(種山雅夫:元航空科学博物館展示部長 学芸員)は若かりしころ、旧管制塔で迷子になって、階段で閉じ込められたことがあります。携帯電話がありがたかったことを思い出しました。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
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