「エンジンそこにつける!?」 突飛な形の民間機たち 一般的なのは主翼下…でもなぜ?
VFW614のその後… 日本にもあった「そこにエンジン?」民間機
VFW614が開発された当時、地方間を結ぶローカル線の主役は、まだレシプロエンジン機からターボプロップエンジン機に変わりつつある時代でした。つまりいわゆる「プロペラ機」が全盛の時代だったのです。VFW614はそのエンジン配置だけでなく、「プロペラ機」全盛時代に、ターボ・ファン・エンジンを積んだジェット旅客機だったというのもポイントです。実は、この機体に搭載されたのはVFW614専用に開発されたエンジンで、ファンの段数が一段という特徴があります。エンジンをそのモデル専用に作り上げるというのも、少数派といえるでしょう。
とはいえ、VFW614はエンジン開発が遅れ、オイルショックもあったことで、少数しか生産されませんでした。しかし、そのあとヨーロッパでは、その後大手航空機メーカーのエアバスが創立。もしかすると、ヨーロッパ域内の製造分担など、エアバスとの関係もないとは言い切れないのかもしれません。
そして、上記のいずれでもない位置にエンジンを配したモデルもあります。日本人にとって最も馴染み深いのが、当時の航空宇宙技術研究所(現JAXAの一部)が1機のみ製造したSTOL(短距離離着陸機)実験機「飛鳥」でしょう。
「飛鳥」のエンジンは、主翼が胴体の上部に取り付けられており、その上にエンジンが4発あるというユニークな形をしています。これは、主翼後縁のフラップ(高揚力装置)に空気を流すためで、同モデルの強みである短距離離着陸性能にも大きく貢献している点です。
なお、「飛鳥」同様のエンジン配置をしているモデルも過去にもいくつか見られますが、実際に国内空港で見ることができるのは、アントノフのAn-74くらいでしょう。まれに成田空港に飛来してくるのを筆者(種山雅夫:元航空科学博物館展示部長 学芸員)は見たことがあります。
ちなみに、プロペラ三発機で、うち一基のエンジンを機首に搭載したモデルや、旅客機ではありませんが、ジェット三発機で機首下面に二基のエンジンを搭載したモデルも、以前写真で見かけたことがあります。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
個人的にはトライランダーの中央エンジンが好き