日本の「次期戦闘機」輸出はできるの? 有志議員が提言もネガティブ材料ありすぎ問題
日本が次期戦闘機を自国主導で開発するために必要なことは?
F-2を後継する戦闘機のあり方を決めるにあたっては、既存の戦闘機の改良型やF-35の追加調達なども検討されました。最終的にこれらでは将来の航空自衛隊の要求を満たせず、また能力向上改修などの自由度を確保することが困難であるとの判断から、わが国主導の開発という手法が採用されています。
日本の産業基盤と将来戦闘機を考える研究会が主張するように、最初から海外輸出を念頭に置いて開発を進めることになった場合は、当然、潜在的な需要の調査も並行して行なわなければなりません。しかし、たとえば次期戦闘機は大きすぎて需要が見込めないという調査結果が出て、それに引きずられて次期戦闘機のサイズを変更するといった事態になれば、これは本末転倒だと言わざるを得ません。
イギリスは2018年7月に「Combat Air Strategy(戦闘航空戦略)」という国家戦略を発表しました。そのなかで、独立国家としての行動の自由を将来に渡って確保していくため、イギリスが主導して新戦闘機(新戦闘航空システム)を開発する必要があることを明言し、そして「テンペスト」を、この戦略を実現するための手段のひとつと位置づけています。
翻って防衛省は、次期戦闘機をわが国主導で開発を行う理由として、航空優勢の確保や運用環境の変化にともなう仕様変更の自由度の確保を挙げる程度にとどまっています。
今後、政府や防衛省が、次期戦闘機開発への巨額投資に対する国民からの批判を避けたいのであれば、まず政府がイギリスのように国家戦略を策定し、それを実現するために次期戦闘機が必要であるということを明確に打ち出して国民の理解を求めた上で、開発費を抑えるため、諸外国との協力のさらなる強化や輸出を考えるべきだと筆者は思います。
【了】
※誤字を修正しました(12月5日13時50分)。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
手動→主導
ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。