旅行業界と貸切バスに待つ「冬眠明け後」の世界 「GoTo」や「MaaS」を救世主と呼べない理由

変化に取り残された「非クルマ旅」

 従来型の旅行会社や、貸切バス事業者にとってはピンチです。そこで2000年代から、「ニュー・ツーリズム」の必要性が叫ばれてきました。「テーマ性を重視し、かつ現地でしかできない体験を提供しなければ、旅行会社の存在意義がない。そもそも、余暇の過ごし方が多様化する中、旅行してもらえなくなる」という危機感の表れです。

 テーマ性と体験型を両立するコンテンツには、映画のロケ地巡り、パラグライダーなど都会ではできないスポーツ、子供の教育にもつながる農漁業体験などの例が挙げられました。

 併せて、ツアーの形は「発地型」から「着地型」に変わるべき、とも言われました。旅の「発地」に当たる大都市の旅行会社が組むツアーだと、凡庸な内容になりがちです。現地の旅行会社なら、地元の人だからこそ知る魅力を発掘してコースを組めるはず。それが着地型ツアーです。全国、世界からの旅行者が現地集合で1台のバスに乗り合わせる形態なら、伝統文化、スポーツや自然など多様なテーマごとに個性的なコースを設定しても集客が容易、という意味もあります。

「鉄道などの幹線交通+現地でのツアー参加」という形態は、以前の定期観光バス最盛期と同じに見えます。異なるのは、コース内容が、有名観光地中心の「金太郎あめ」でない点です。

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水陸両用バスなど車両に工夫をしてアトラクション性を高める現地ツアーも増加している。写真は「スカイダック横浜」。ただし緊急事態宣言にともない運休中(Goran Bogicevic/123RF)。

 では、実際に、「昭和の旅行」からの脱却は進んだのでしょうか?

 宿泊施設は、成功した分野と言えるでしょう。以前の温泉旅館は、団体の受け入れに適した、客室やサービスが画一的な大型施設が中心でした。しかし、ウェブ予約が中心になり、旅行会社のパンフレットよりも格段に多い情報を、旅行者自身が見比べなら予約できる環境になりました。結果、「大浴場はないが、客室に露天風呂」や、「ペット同伴可」といった個性的な宿が増えています。

 クルマ旅行であれば、好みの宿を予約して、個性的な旅行を楽しむことは容易になったように感じます。しかし肝心の、公共交通を使う「非クルマ旅行」の分野が、十分に変化したとは言えそうにありません。

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コメント

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1件のコメント

  1. 以前二次交通ということがいわれていましたがMaaSは業者横断的にやらないと自社系列内への囲い込みに見えます。 
    団体旅行を値切ってバスの席を埋めてペイするのはいいとしてミステリーツアーは目的地には愛着や憧れはないのでしょう(悪いとは言いません)。 
    今の60歳以下は必然性がなければ団体旅行にはほとんど参加しないのではないですか。 
    集合・出発時刻に拘束される旅程、というものがないクルマでの旅行に流れるのは仕方ないことです。