【空から撮った鉄道】飛行機が主役の都市シアトルで巨大な鉄道車両を捉える アメリカ大陸初空撮

2019年6月、ワシントン州シアトル在住の知人へ会うために渡米し、空からアメリカというものを感じてみたいと、ヘリをチャーターして空撮しました。初めて見るアメリカの鉄道はどれも巨大でした。

この記事の目次

・初のアメリカ空撮は飛行機と鉄道の関わりも目的のひとつに
・ドアを外したヘリに命綱をつけて搭乗
・いよいよシアトルでの空撮を開始
・最後のほうではアメリカならではの光景も

【画像枚数】全25枚

初のアメリカ空撮は飛行機と鉄道の関わりも目的のひとつに

 私は事あるごとに海外へ行くので、周囲からはてっきりアメリカ大陸も訪れているものと思われていますが、意外と上陸したことがなく、ニューヨークすら未踏です。初めて北米へ訪れたのは2019年6月のこと。シアトル在住の日本人の知人へ会いに行ったときでした。

 せっかくアメリカ本土へ行くのだから、空から撮ってみようと思い立ちました。シアトルとは無縁だったので、まず地形や概要を知り、鉄道の情報などを調べます。ただ漠然と空撮するわけではないので、時間帯も含めて計画を練りました。午後の時間帯だと、運が良ければ、カナダのバンクーバーから向かってくる国際列車「カスケード号(Amtrak Cascades)」の到着が撮れるかもしれません。ただ、日本のように旅客列車はバンバンと走っておらず、貨物列車メインとなりそう。旅客鉄道は脇役のようです。

 出発前の準備は撮影場所の選定と、空撮用機体の予約です。幸い、知人の伝手を使ってヘリ会社とメールで連絡を取り合い、ヘリのチャーターはスムーズに完了。13時から2時間の空撮を予定しました。

Large 210220 seattle 01

拡大画像

シータック空港(シアトル・タコマ国際空港)のそばをシータック/空港駅へと向かうシアトル・ライト・レールのLRV。ちょうど画面左上側ではJALのボーイング787型機が誘導路へと向かっている。撮影した約3ヶ月前、JALは27年ぶりに成田~シアトル線の就航を開始した(2019年6月28日、吉永陽一撮影)。

 今回の空撮はアメリカの鉄道を捉える以外に、飛行機と鉄道の関わりも目的のひとつにしました。シアトルといえば、マリナーズのイチロー、スタバ、マイクロソフト、アマゾンだけでなく、ボーイング発祥の地です。私のような鉄道も飛行機も大好きな人にとっては、ウズウズしてしまいそうな「飛行機の聖地」です。シアトルにとって身近な飛行機と、貨物輸送がメインの鉄道を空から対比できれば、アメリカの長距離の交通事情も垣間見られるのではなかろうかと。

ドアを外したヘリに命綱をつけて搭乗

 いよいよシアトルへ到着。ヘリ会社との事前打ち合わせはとくにせずとも大丈夫で、心配だった天候も晴れ予報で問題ないです。6月のシアトルは1年で一番気候が良く、晴れが続きます。2019年6月の天気も晴れ続きでした。また事前に知り得た情報では、パイロットが現地在住の日本人とのことで、言葉の壁も無く、細かいニュアンスも伝わります。

 ヘリはシアトル南部の郊外にある、主に自家用機とトレーニング用のAUBURN(オーバーン)飛行場から離着陸します。窓ではなくドアを外し、命綱を装着してのフライトです。ヘリコプターでの空撮は、国内外問わず窓を開けるよりもドアを外すことの方が多く、命綱を装着し、足の爪先から向こうは数百メートル上空の世界です(笑) 今回の空撮では6月の爽やかな気候がダイレクトで伝わり、観光では味わえないシアトルの生々しい空気を体感できます。

 なお、この飛行場はケント州に位置し、「シータック」と呼ばれるシアトル玄関口タコマ国際空港の南東に位置します。そのためヘリが離陸した直後からシータック空港の管制圏内となり、管制官とのやりとりが頻雑となります。

 今回のシアトル空撮では、シータック空港、レントン空港、キング群国際空港(ボーイングフィールド)と、旅客機が離発着できる空港が近接し、シータック以外はボーイング社のテストフライトにも使用しています。そのため管制圏内だらけで、移動するたびに管制官との交信が頻雑になります。日本で例えるならば、関空と伊丹空港と神戸空港がより近接した感じでしょうか。離陸してから北上するように、順序よくプランを組みました。とはいえ、旅客機などの離着陸優先で、撮影ポイントは上空判断で前後させます。

残り2396文字

この続きは有料会員登録をすると読むことができます。

2週間無料で登録する

Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

最新記事