ANA印の「珍機」離島に出現 「主翼付き+上空で変形」ドローンで地域の医療課題解決実験
時速100kmでてたらしい……。
垂直乗降時は4発、巡航は2発
11の有人島と52の無人島から構成される、長崎県の五島市。ここでANAホールディングスが、武田薬品などと、同市の主要島である福江島と、そこから海を隔てて16km、直線でも12km離れた久賀島の久賀診療所のあいだを、次世代の航空モビリティを用いて処方薬を配送する実証実験を行っています。
このモビリティを用いれば、定期船と陸路で45分程度かかるところ、約10分(無風時)で配送が可能といいます。2021年3月25日(木)、この実証が報道陣に向け公開されました。
使用される次世代モビリティは、ドイツのウイングコプター(wingcopter)製のドローン。ただ、一般的なものとは異なり、翼がついています。ANAホールディングスが試験運用したのは、「VTOL(Vertical Takeoff and Landing)固定翼」つまり、ヘリコプターのような垂直離着陸性能を持ちつつも、飛行機のように「固定翼」がついたドローンなのです。同社にとっても、固定翼VTOL航空機を使用するのは、今回が初といいます。
これまでANAグループでは、2022年度に予定されている「レベル4(有人地帯における補助者なし目視外飛行)」解禁にともなう、ドローンによる配送サービス実用化にむけて、五島市を始めとした各地域で実証実験を重ねています。
ANAホールディングスの担当者が「垂直離着陸できる固定翼機を使うことで、これまでのドローンより航続距離が大幅に伸び、スピードも大幅に改善すると見込まれます。これで、対応できる二次離島の範囲が広がることが予想されます」とコメントするとおり、報道公開されたフライトにおいて、このドローンは、対地速度で105km/h(久賀島→福江島)を記録しています。
なお、このドローンの推進装置は4発のプロペラとなっており、垂直離着陸時は4発すべてが下向きについています。一方、巡航時は前側2発の角度が前向きに変化。その2発で、まるでプロペラ旅客機のように飛びます。なお、巡航時、いわゆるエンジンがひとつ故障しても「片肺飛行」が可能であるなど、航空会社のANA(全日空)さながらの体制が取られているそうです。
今回の実験では、久賀島民がオンライン上で診療と服薬指導を受けたあと、その処方箋がドローンによって運ばれるというもので、先端技術を生かして地域医療課題の解決を目指すというものでした。住民は「体力的にも時間的にも楽でありがたい」とコメントしています。
【了】
写真を見る限り、プロペラは「前だけ」ではなく「4基とも」角度が変わると思いますよ。
前の2基は前方へ、後ろの2基は後方へ向くものと。
固定翼モードでは4基とも角度変わりますが、後ろのプロペラは空気抵抗にならないよう折り畳まれ、回転して推進力を発揮するのは前側2基だけのようです。