羽越・奥羽新幹線 線路の造り方「工夫」して開業へ一歩前進? 秋田新幹線より早く

「一般的な新幹線」にいくつか「工夫」をします

 今回、費用便益比が「1」を上回るような調査結果も出せた理由として、いわば「一般的な新幹線」から構造を簡素化して建設することになる次の「工夫」が挙げられます。

・線路を複線から単線にする。
・線路を高架橋から土構造にする(地面の上に線路を敷く)。
・駅舎を土木構造物が少ない「ハイブリット駅舎」にする。

Large 210623 uetsu ouu 02
土構造とハイブリッド駅舎のイメージ(画像:羽越・奥羽新幹線関係6県合同プロジェクトチーム)。

 そして、これに次の前提条件が加わると、費用便益比が「1.08」になるとのこと。

・最高速度320km/hとする(同様の新幹線では現在のところ260km/hが基本)。
・2060年まで経済成長する想定。
・社会的割引率を3%とする(国交省の指針では4%)。

 もしこの前提条件が、それぞれ「260km/h」「2028年まで経済成長」「社会的割引率4%」と、いわば悲観的なものになると、費用便益比は先述の「工夫」をしても「0.65」です(「工夫」をしないと最少の「0.47」になる)。

「社会的割引率」は、便益や費用を現在の価値に換算する係数。今回の試算では、近年の国債利回りや費用便益比の算定例から「3%」も検討したといいます。

 また羽越新幹線と奥羽新幹線では、全体的に羽越新幹線のほうがやや良い費用便益比という結果です(条件が最も良い場合の費用便益比は奥羽新幹線単独整備で「1.44」、羽越新幹線単独整備で「1.55」)。

 両新幹線の総事業費は、「工夫」をした場合で4.04兆円から4.22兆円という試算(「工夫」しないと5.35兆円)。調査結果では、2045年の開業が予定されています。

【了】

【地図】羽越・奥羽のほかにも全国に色々 「建設リストに載っている新幹線」路線図

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

6件のコメント

  1. コロナ前からプロジェクトがあって進めていたのでしょうけど
    このタイミングで出すのか……
    JR東日本管内だよね
    コロナ後を見据えた業態の見直しを模索しているJR東日本へこの案を提示しても良い顔しないでしょう

  2. 並行在来線と貨物列車の扱いどうするつもりなのやら。
    開業する頃には三セクで残せるほど在来線に旅客需要ないだろうな。

  3. 羽越新幹線を整備するくらいなら在来線の高速化を推進すべきかと思いますね
    160〜200km/h運転のスーパー特急なんかは良いかと思いますが

  4. 乗り入れる在来線をガントレットにすればいいのでは。

  5. この手の評価って過大評価してやっと1だからね。実際開業してみると半分にしか届かないとかよくある話だし、税金の無駄遣いもいい所。
    ミニ新幹線区間を改良して160km〜200km出せるようにした方が現実的。

  6. 奥羽新幹線が開業したら、新幹線で湯沢・横手へ行ける。