ヤマハ「電動キックボードの対抗馬」市場投入間近か 立ち乗り3輪「トリタウン」
道路交通法改正をにらむ
記者(中島みなみ)は2019年11月、JR高山駅西交流広場を起点に実施された公道走行実験でトリタウンを体験しています。このとき、確かに歩道と車道の段差も、点字ブロックに乗り上げて走り続けた場合も、ハンドルをゆさぶられることはありませんでした。
トリタウンは14インチタイヤをはき、最低地上高が180mm。竹馬に乗った感じで、ちょっと見晴らしがよくなった気がします。足元が不安定な状態で視線が高くなると不安になりますが、前2輪のリーン機構で安定しているため、操縦方法を体感すれば楽しさが優って、まさに移動に楽しさを加えたヤマハらしさを感じることができました。CO2削減のモビリティとして例示される期待を感じさせる乗り物です。
ヤマハの自信は、新しい乗り物を織り込んだ道路交通法の改正が具体化しつつある時代が後押ししています。
公表されているトリタウンの大きさは1100mm(長さ)×600mm(幅)×1130mm(高さ)。折りたたんで持ち運べるほどコンパクトではありませんが、シェアリング事業で使われている電動キックボード、例えば幅は「LUUP」のキックボードより150mm広いものの、「mobby ride」のそれより長さは170mm短く、ほとんど車格は変わりません。また、警察庁が示した電動キックボードの規定にも収まる大きさです。
2021年現在、大都市圏を中心に、これらシェアリング用の電動キックボートを小型特殊自動車扱いにする特例が運用されています。警察庁交通局は、事業者が積み上げたデータの提供を受けて、年度内にも電動キックボードの最終的な取り扱いを、有識者検討会で方向付ける予定です。順調に進めば、2022年には電動キックボードなど新しいモビリティを盛り込んだ道路交通法の改正や道路運送車両法の改正が起案される予定です。
ヤマハには新しい乗り物の市場を作った実績があります。1990年代に先駆けて開発した電動アシスト自転車は、2030年には1500万台の世界市場になると、丸山氏は予測します。
トリタウンがこれまでと同様の個人所有になるのか。シェアリング用途など事業用での供給となるのか。市場投入の形はわかりませんが、新しいパーソナル・モビリティとして実感できるようになるのは、それほど時間を必要としないことが伺われます。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
普通の形の電動原チャリをお願いしますよ。「充電させてもらえませんか」で使われているのは日本製ではないということなので寂しさを感じています。