踏切警報音は「カンカン」なのか ところ変われば擬音も変わる?「ジャンジャン」もあり
「ジャンジャン」鳴る踏切がある?
しかし、擬音表現は聞いている人が自身の主観と感性に基づいて文字へと変換しているに過ぎません。例えば、犬の鳴き声は日本なら「ワンワン」が一般的ですが、英語圏だと「バウバウ」が一般的。同様に、踏切の警報音も「カンカン」が一般的ですが、「チンチン」と表現する人もいます。
踏切警報音の擬音表現に正解はなく、国土交通省をはじめ地方自治体の公文書、鉄道事業者が出す文書などにも擬音表現は見当たりません。そうなると「踏切警報音は本当に『カンカン』が正しいのか」という疑問がわきます。
筆者(小川裕夫:フリーランスライター・カメラマン)は全国の踏切を訪ね歩くうちに、「ジャンジャン」という擬音表現を見つけました。これは新聞社や雑誌社が用いている表現ではなく、福井鉄道が踏切に設置している看板に書かれていたものでした。踏切警報音を「ジャンジャン」と表現する人はあまり多くないと思いますが、それでも全国津々浦々の踏切を探訪していて見かけた唯一の例でした。
この踏切だけが特殊な音色なのかと思い何度も警報音を聞きましたが、ほかの踏切の音と特に違いは感じられませんでした。つまり、一般的な「カンカン」と同じ音だったわけです。福井鉄道にも話を伺いましたが、「ジャンジャン」となった理由は不明とのことでした。
また、普段からこの看板を見ているであろう数人の福井県民に話を聞いてみると、日常的に踏切警報音を「ジャンジャン」と表現することはないと話しました。ただ、表記を見慣れていることもあり、「ジャンジャン」という表現に違和感はないようでした。
【了】
Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)
フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。
コメント