WW2イタリア「特攻ボート」の戦果とは? 観光艇改造“生還前提”の体当たり 日独に影響

危険を伴う体当たり攻撃&脱出方法

 M.T.M.型突撃ボートの攻撃方法は、高速を活かして目標艦に近付いたところで搭乗員は予測される衝突進路に舵を固定。その後目標の90m以内まで来たら搭乗員はレバーを引き、操縦席後部の折畳み式救命筏を外し海面に落とすとともに、突撃ボートから脱出します。

 無人となったM.T.M.型ボートは、敵艦に衝突すると、艇首にあるトリガーバーによって、まず小型信管が作動し火薬を爆発させることで船体を2つに折って沈没させます。そして、2つに折れたM.T.M.型ボートの船体が敵艦の吃水線下まで沈んだところで、今度は水圧式信管が作動してメインの330kg爆薬に点火。これにより敵艦を沈めるという流れでした。

 なお、この間に搭乗員は海面に落としておいた救命筏に這い上がり、爆発の衝撃波をかわすという複雑な戦法を採っていました。

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高速でデモ走行するM.T.M.型突撃ボート。搭乗員は操縦席から乗り出して折畳み式救命筏に腰掛けているが、これは脱出前の状態で、通常は中に座り頭だけ出す(吉川和篤所蔵)。

 このように突撃ボートは、搭乗員の生還を期した構造になっていました。しかし脱出するのは衝突の数秒前というきわどいものであり、実際には目標到達を確実にするために搭乗員達がその身を犠牲にすることもあったと伝えられます。

 また、前述したような複雑な二段階式の点火装置を敬遠し、搭乗員自ら、最初の敵艦への衝突で直接メイン爆薬の信管が作動する改造をしばしば行っていました。この改造は同時に爆発までの脱出時間も短くするものであり、危険性を増すものでした。

 ハナシを元に戻すと、こうして開発されたM.T.M.型突撃ボートは、1940(昭和15)年にイタリア海軍に納入されます。そして、このM.T.M.型を運用するために、甲板に電動ウインチや発進レールを増設する改造が、セラ級駆逐艦(排水量960トン)の一部の艦に施されました。なお、この改造が施された駆逐艦は1隻でM.T.M.型6隻を搭載でき、各艇を35秒間隔で発進させる能力を有していました。

【図解】爆薬積んだ特攻艇の攻撃の仕方

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