F-35が新世代戦闘機の“正統”になったワケ 旧世代F-15もまだまだ使う前提? 運用の実際
3タイプつくられたF-35 その裏にある「失敗」
F-35は航空自衛隊やアメリカ空軍、オーストラリア空軍などが陸上基地で用いるF-35A、アメリカ海兵隊やイギリス空軍などが強襲揚陸艦や軽空母に搭載するF-35B、そしてアメリカ海軍が大型の正規空母に搭載するために開発・運用するF-35C、この3タイプがあります。
ひとつの機種をベースとして役割に応じた複数のタイプを開発すれば、多くの部品を共有でき、開発費や運用コストを抑えられます。これは軍事費を削減するには有効ですがデメリットもあります。往々にして、中途半端な性能しか発揮できない軍用機になってしまうのです。
アメリカには、1960年代に空軍と海軍の機種統一を図ろうと、意欲的な戦闘攻撃機としてF-111「アードバーグ」を開発したものの、双方の要求を盛り込んだ結果、まさに中途半端で両軍とも満足できないような機体となってしまったという苦い経験があります。しかもF-111は、不具合が多発したためアメリカ製軍用機としては少数といえる158機で生産が打ち切られており、F-35はそうした失敗をふまえて開発されました。
では、このような方向で開発されたF-35は、現代における実際の航空戦力としてどのように位置づけられるのか、現状をみていきましょう。
軍用機の開発には時間と費用がかかります。そのため自前で開発する方針を貫くフランスなどヨーロッパの一部を除き、ほとんどの西側諸国では、アメリカから購入した第4世代戦闘機のF-15、F-16、F/A-18などが主力機として運用されています。
F-22が登場するまでF-15はデビュー以来一度も撃墜されていない最強の戦闘機といわれてきましたが、ロシアや中国との航空機開発競争で第5世代戦闘機への代替えに迫られています。その役割を果たすのがF-35というわけです。
F-35Aは空軍が使用し、空母やそれに準ずる航空機運用能力が付与されている強襲揚陸艦を保有する国のなかにはF-35Bを導入しているところもあります。2021年10月現在、F-35の導入国はイギリス、イスラエル、イタリア、オーストラリア、オランダ、ノルウェー、韓国、そして日本で、実戦に投入したのはイスラエルとアメリカとなっています。ちなみに、トルコも導入する予定でしたが、ロシアに軍事機密を横流ししている疑いからアメリカは輸出禁止にしました。
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