首都高の老朽化深刻 開通60年で「つくりかえ」さらに拡大へ 語られた最悪のシナリオ
老朽化する道路インフラをどうするか――2010年代に浮き彫りとなった課題に対し、大規模更新・大規模修繕を推進してきた首都高ですが、時を経てさらに深刻度が増しています。
開通50年超の構造物が全体の2割に
首都高の老朽化が進行しています。2021年12月22日(水)、有識者などがその対策を話し合う「首都高速道路の大規模更新・修繕及び機能強化に関する技術検討委員会」の第1回会合が、東京の首都高速道路本社にて開催されました。
首都高では、最初の区間が開通して50年を経た2013(平成25)年3月、今回の委員会と同様の「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査委員会」が提言をまとめ、それに基づき5か所で“つくりかえ”を含む大規模更新、計55kmの区間で大規模修繕を行っています。
それから8年を経て、開通から50年以上が経過した路線の割合は、2014年の4%から、2020年には22%に増加。これに伴い重大な損傷の発見数は橋梁で1.1倍、トンネルで1.6倍、特にトンネルの漏水箇所は約3倍に跳ね上がっているそうです。
そうしたなか首都高では1日100万台が走り、道路への影響が大きい大型車が一般道の約5倍。「世界でも、ここまで過酷な状況に置かれている道路はない」と、委員会委員長で横浜国立大学大学院の前川宏一教授は話します。
前回の委員会で選定され、いま行われている大規模更新・大規模修繕箇所は、「そのままでは、今後何をやってもうまくいかなくなる箇所」(前川教授)だそう。そこは改善されてきているものの、「たった55km」だとしたうえで、前川教授は次のように話します。
「放っておけば、かつてのアメリカのように“直すもの”よりも“ダメにするもの”が増えていき、『どの道路を止めるか』の選択をしていくことになる。これが最悪のシナリオです」
これは、道路施設の維持管理が十分でなかったことから、1980年代に老朽化が健在し「荒廃するアメリカ」と呼ばれた状況になぞらえたもの。日本ではかねて、2010年代にその状況が起こると言われていました。
遷都したらよろし。