「敵基地攻撃能力」のハードルが異様に高いワケ 対レーダーミサイルも必須だけど…?

「対艦」「対地」などミサイルにもいろいろあるなか、「対レーダー」というカテゴリのものがあります。日本の「敵基地攻撃(反撃)能力」議論に欠かせないものですが、導入すればあとは大丈夫、というものではなさそうです。

装備や法だけじゃない 敵基地攻撃能力をめぐる難しさ

 現在、自衛隊は敵基地攻撃能力の構成要素を部分的に保有しつつある状況ですが、しかし、それは日本単独でこれを実行することができるようになるということを意味するわけではありません。

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航空自衛隊のF-35A戦闘機。AARGM-ERの運用が可能になるというが、自衛隊が同ミサイルを導入するかは不明(画像:航空自衛隊)。

 なにより、これまで自衛隊は敵基地攻撃のための能力を保有したことがなく、そのためそうした想定の訓練を実施したこともないと考えられます。仮に敵基地攻撃能力を本当に獲得しようとするならば、アメリカ軍などと共同でそうした訓練を繰り返し実施し、長い期間をかけてノウハウを獲得していく必要があります。

 また仮に、敵基地攻撃能力に必要な要素を全て保有したとしても、自衛隊はそれのみを行うための組織ではなく、同時に離島を含む日本自体への侵攻にも対処しなければなりません。

 つまり、敵基地攻撃にのみ力を注ぐことはできず、アメリカ軍との共闘が絶対的な条件とならざるを得ないのです。したがって敵基地攻撃能力といっても、それはあくまでも日米同盟の中でアメリカ軍の作戦を補完するという位置付けになることが予想されるというわけです。

 冒頭でも触れたように、これまで敵基地攻撃能力は北朝鮮の軍事的脅威への対抗策として議論が進められてきましたが、しかし、近年では急速に軍備を増強している中国への対応も視野に入りつつあります。中国の場合、ミサイル発射装置だけではなく、航空基地や海軍基地などへの攻撃も必要になることが想定され、北朝鮮の場合とは異なる能力が必要となります。

 敵基地攻撃能力について、これを保有するべきか否か、あるいはこれをどのような目的で保有するべきかについて、現実的な議論が求められます。

【了】

【写真】典型的というか どノーマルというか…見た目はほぼ特徴のない「AARGM-ER」

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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