近鉄の新型車「座席付きフリースペース」で勝負に出る デザイナーに聞く課題と思い

ベビーカー利用者になって感じた「分かりづらさ」

 川西さんはこの“仮称フリースペース”の背景について、「そもそも、『子育てしやすい沿線』『選ばれる近鉄沿線』を目指そう、という議論がありました」と話します。関西の他の私鉄が、沿線開発などで子育てしやすい沿線を意識している中で、近鉄は遅れをとっているといいます。

「そこで近鉄の新型では『全てのドアからベビーカーなどが乗れる電車にしましょう』、これによって、他社とは異なる魅力(=住んでみたい)を打ち出すことができると提案しました」(川西さん)

 つまり、このスペースと車両を通じて、「子育てしやすい沿線」を体現しようというわけです。

 しかし、「着席定員が減るわけですから、近鉄本社も相当な覚悟と挑戦でした」(川西さん)。調整の結果、全てのドア付近に“仮称フリースペース”を設けるには至らなかったものの、「かなりインパクトのある挑戦になったと思います」と振り返ります。

 このスペースについて川西さんは、プロジェクトが始まった頃に娘さんが生まれたことがきっかけになったとSNSで公表しています。

「どこへ行くにもベビーカー連れとなったのですが、近所の駅でベビーカーを電車に乗せようとすると、車両形式によってベビーカースペースの位置が異なったり、そもそもスペースがなかったりと、分かりづらく感じました」(川西さん)

 なお、このスペースの床や座席には緑色が使われますが、これは「平城宮跡や曽爾高原のような芝生の広場をイメージして気軽さを演出しています」とのことです。

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車内イメージ。右手前が座席付きフリースペース(画像:近畿日本鉄道)。

 ちなみに新型の外観についてSNSでは、かつての「近鉄バファローズの帽子の配色に似ている」との声もありましたが、川西さんによると、「バファローズは一度も議論に出ていません」とキッパリ。

 ただ、「次世代の近鉄電車は何色か」を議論し、たくさんの色・塗装パターンを検討して、最終的に伝統の赤色が基調になったといいます。

【了】

【ベビーカーも収まりいい!】座席付きフリースペースの利用イメージ 画像で見る

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