日本の「極超音速エンジン」開発へ一歩「スクラムジェット燃焼」 40年越し大実験の意義

JAXAが鹿児島県から打ち上げたスクラムジェット燃焼試験用のロケット「S-520-RD1」。今回の試験は、関係者にとって40年越しの悲願になったそう。その理由と、今回の試験が抱えていた2つの大きな意味を探ります。

ISAS以外が始めてS-520を購入、打ち上げ

 SNSなどでは、防衛装備庁の委託研究をJAXAが行っていることについて、問題視するような向きも見受けられます。確かに、実験結果は使い方によって宇宙開発にも防衛装備にも繋がりますが、だからといってその技術自体が悪いわけではありません。

 たとえば、金づちは釘を打って家を建てることもできれば人を殴って傷つけることもできますが、だからといってその存在が害であると考える人はいないでしょう。ラムジェット燃焼の空気中での燃焼試験は、「よい金づちを開発するためには効率的に釘が打てるハンマーヘッドが必要だから、それに合った素材の条件を確かめる」というくらい、基礎的な実験です。

 宇宙輸送機に発展させたいJAXAの思惑と法律上の縛り、極超音速飛翔体に発展させたい防衛装備庁の思惑と法律上の縛りが重なったところがこの基礎実験で、補助金が下りたために大規模な実験ができた、といえるでしょう。

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S-520-RD1打ち上げの様子(画像:東京とびもの学会)。

 打ち上げに使われたS-520ロケットは、ISASが開発しIHIエアロスペース(IA)が製造する単段式の観測ロケットです。直径520mm、全長8m、到達可能高度は約300kmになります。1980(昭和55)年の初飛行以来、2022年6月末までに31機が打ち上げられていますが、これまでは全て開発元であるISASが調達して実験を行っていました。

 ところが今回は、JAXAの研究開発部門という部署が、ISASとは関係なく独自に調達を行いました。これにより、初めてISAS以外にS-520ロケットの購入者が現れた、ということになるでしょう。観測ロケット全般で言えば、ISASが開発したS-310ロケットを、1970年代後半に極地研究所が調達して南極の昭和基地から打ち上げた以来のできごとになります。

 日本はロケットの商業化を目指していますが、大型ロケットだけでなく小型ロケットも税金に頼らずに黒字化し、進化を続ける必要があります。その点で単段式のS-520ロケットに開発元だけではない購入者が現れたのは大きなできごとだと、筆者(東京とびもの学会)は考えています。

【了】

【距離5mの至近から】小型といってもデカい「S-520」ロケットを前から左右から

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