別府が誇る絶景“秘境路線バス”ついに廃止 温泉街育てたバス界の個性派「亀の井バス」の今

日本有数の温泉街・別府の秘境路線バスが廃止に。その終点「内成棚田」の絶景を、温泉街の新たな名物として地域総出でPRしてきたものでした。温泉街の育ての親が生んだバス業界の個性派「亀の井バス」が、いま苦境に立たされています。

元祖「生きてるだけで丸もうけ」の創業者から続く“盛り上げ精神”

 同社はバス会社としての成り立ちも少々変わっています。創業者・油屋熊八は1911(明治44)年に「亀の井旅館」(現在の「別府亀の井ホテル」)を創業。極上の寝具と最高峰の料理人、給仕がもてなす3部屋だけの旅館は話題を呼び、「謎を呼ぶ立て看板を全国に立てる」「自腹で飛行機をチャーターして大阪上空からビラを撒く」「全国初の女性バスガイド」などの宣伝手法で、新聞や黎明期のラジオなどを通じ全国に“温泉街・別府“の名を広めることに。業績を拡大したこの旅館の送迎バス・観光バスが、現在の亀の井バスの源流となっています。

「生きてるだけで丸もうけ」という油屋熊八の人生訓は、その生き方に感銘を受けた落語家・笑福亭松之助師匠から弟子である明石家さんまさんに引き継がれ、思わぬ形で広く知られています。

 別府市内には、現在の周遊観光の定番「別府地獄めぐり」や旅客船埠頭など、もともと氏が金に糸目をつけず私財で整備したものも多く、「別府観光の父」と呼ばれているのも頷けます。

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別府市内には高熱の泉源が数多く、「地獄めぐり」として観光の定番になっている(宮武和多哉撮影)。

 旅館の創業から100年余り、亀の井バスは様々な人々と手を組みつつ、内成棚田を別府の名物として育てようとしていました。コロナ禍でその事情は一変してしまいましたが、早期に廃止となってもおかしくなかった内成線の維持も、創始者・油屋熊八が目指してきた「別府への貢献」の一つなのかも知れません。

【了】

【路線図/写真】絶景・激セマ道走る「内成線」 まだ味わえる!

Writer:

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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