「カチューシャ」から「HIMARS」へ 当たらぬゆえ多連装だったはずのロケット砲の系譜

ウクライナ軍とロシア軍で多連装ロケット砲が多用されているのは、前身である旧ソ連軍がそうだったから、といえるでしょう。そしてその旧ソ連軍の多連装ロケット砲といえば「カチューシャ」の名で知られます。

味方すら腰を抜かした「スターリンのオルガン」の恐怖!

「カチューシャ」といえば女性の名前であり、ヘアアクセサリーの名前でもあります。なぜ兵器にこんな名前がつけられたのか、諸説あるもののよく分かっていません。正式な名称でもないのですが、「多連装ロケット砲」全般をさす呼称として定着しています。

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ソ連軍がWW2で使用した「カチューシャ」ロケット砲BM-13(画像:Yurii-mr、CC BY-SA 4.0〈https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0〉、via Wikimedia Commons)。

 1941(昭和16)年6月、ソ連はドイツ軍に攻め込まれ急いで砲兵を増強する必要がありました。先にふれたように、ロケット砲は簡単な構造で安価に製造できたので、そうした緊急の増産にはうってつけでした。戦争中に1万台以上が製造され、あらゆる種類のトラック、装甲車、それから装甲列車などにも搭載されました。

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「カチューシャ」後部。鋼材を組んだ簡単な構造であることが分かる。

 ドイツ軍からはその飛来音から「スターリンのオルガン」と恐れられ、ソ連軍が初めて戦場に投入した時には、一斉射撃の迫力にソ連軍兵士まで逃げ出したというエピソードもあります。

 コストパフォーマンスに優れた「カチューシャ」は、第2次世界大戦でソ連の勝利に貢献し、そしていわゆる「戦場の女神」になりました。効果を実感したソ連は、戦後もロケット砲を重視します。

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「カチューシャ」の子孫、ウクライナ軍のBM-21(画像:ウクライナ陸軍)

 そして現在、ウクライナの戦場では双方の防空システムが空に睨みを効かせているので制空権が確保できず、航空機の活動は不活発で、そして長距離火力投射は火砲に頼らざるを得ないという状況になっており、そうしたなか射程の長い「カチューシャ」の子孫たちがその実力を発揮し続けています。

【画像】「数撃ちゃ当たる」を文字通り実行する「カチューシャ」の様子 ほか

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コメント

1件のコメント

  1. HIMARSの利点は、40秒で全弾発射して即逃げられることであり、イージスのような自動捕捉発射システムがあったとしても、逃げる方が速いです。

    HIMARSを潰すには、追尾誘導弾を使うしかなく、ロシアはこの種類の装備の数が少ないだけでなく、精度が悪く当たりません。

    ロシアがHIMARS撃破の発表をした後に、米国が提供台数全ての稼働を確認しており、ロシアによる撃破数は皆無となります。

    ロシアの嘘を検証無しに堂々と発表してはいけません。