海上自衛隊で最も“実戦経験”アリ「掃海部隊」の凄み 米軍も一目置く旧海軍唯一の生き残り

自衛隊屈指の実戦経験部隊「掃海隊群」

 一方、その頃の日本国内では朝鮮に出動した連合国軍に代わり、治安維持を目的とした警察予備隊が設置されます。これはポツダム宣言受諾に伴うGHQの命令でした。警察予備隊は1952(昭和27)年8月に設置された保安庁に移管され保安隊となります。この時点で掃海部隊は海上保安庁の海上警備隊所属でした。

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2022年5月3日、初めて横須賀基地に入港する掃海隊群の護衛艦「もがみ」(画像:海上自衛隊)。

 その後、1953(昭和28)年に朝鮮戦争が休戦すると、アメリカの要請で日米相互防衛協定が結ばれます。この協定に基づいて保安隊は陸上自衛隊、海上警備隊は海上自衛隊へと姿を変えました。これは事実上の再軍備といえるものでしたが、終戦後に日本を武装解除したアメリカは、世界情勢の変化により日本に再び軍事組織が誕生することを望んだのです。

 こうして海上自衛隊に編入された掃海部隊は、掃海隊群として新たなスタートを切りました。

 その後、幾多の変遷を経て、掃海隊群は2013(平成25)年の「防衛計画の大綱」を受けて、島嶼防衛も実施できる水陸両用戦部隊に生まれ変わっています。

 アメリカ海軍は、長い歴史と実戦経験から掃海技術についても世界でトップクラスのノウハウを持っています。それに対し、日本の掃海部隊も朝鮮戦争後、日本各地で発見される大戦型機雷の処分作業を行い続けただけでなく、1991(平成3)年の湾岸戦争後のペルシャ湾に派遣されて、彼の地でやはり機雷の除去作業に従事するなど常に第一線で活動を行い続けてきた経緯があります。ある意味、陸の不発弾処理と共に自衛隊で1、2を争う「実戦経験」を有していると言えるでしょう。

 だからこそ、旧海軍時代から途切れることなく続く歴史と相まって、アメリカ海軍にも一目置かれる存在となっているのです。

【了】

【写真】危険な「モルモット船」をはじめとする往年の掃海装備

Writer: 時実雅信(軍事ライター、編集者、翻訳家)

軍事雑誌や書籍の編集。日本海軍、欧米海軍の艦艇や軍用機、戦史の記事を執筆するとともに、ニュートン・ミリタリーシリーズで、アメリカ空軍戦闘機。F-22ラプター、F-35ライトニングⅡの翻訳本がある。

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