なぜその形? 空港で視覚障害者を道案内する“スーツケース型”ロボ 盲導犬の代わり…ではない!

空港での実験には、開発の原点が

 AIスーツケースを思いついたのは、IBMのフェローで日本科学未来館の館長でもある浅川智恵子さんです。今回、実験の場所に空港を選んだ理由、そこにAIスーツケース開発の原点があるといいます。引き続き、日本科学未来館の担当者の話です。

「(浅川さんが)スーツケースが道案内をするという着想を得たのがまさに空港でした。一人での海外出張が多かった浅川が、白杖とスーツケースの両方を持って空港内を移動する際、スーツケースが白杖の代わりに障害物に当たったり、段差があることを知らせてくれたりすることに気づいたのです」

 そこから、スーツケースにAIやモーターを搭載し、自律的にナビゲーションするAIスーツケースの開発が始まったといいます。

「空港は多くの人が大きな荷物を持ちながら行き交い、カートも利用されるような特殊な環境です。ここで利用者を安全に誘導するには、人混みの中で周囲の人をどのように避けるかという判断を繰り返す必要があり、そういった場面の技術開発に有用ということで実験に至りました」

 AIスーツケースは、浅川さんが客員教授を務める米国カーネギーメロン大学の研究室で2017年頃から開発がスタート、2019年からは日本IBMなど5社で開発を進め、2021年、浅川さんが日本科学未来館の2代目館長に就任したのを機に同館も開発に参加しました。同館ではAIスーツケースの体験会なども実施されています。

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日本科学未来館でのAIスーツケースの実証(画像:日本科学未来館)。

 担当者は、今後の展開について、「AIスーツケースに搭載されているバッテリーやコンピューターなどをもっと小型化できれば、将来的には、中に荷物を入れられるなど、まさに本来のスーツケースとしての役割も果たせるかもしれません、また、この技術が確立されれば、視覚障害者だけではなく高齢者などの日々の暮らしをサポートすることもできるかもしれません」と話していました。

【了】

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Writer: 西田伸昌

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