世界が注目「エリザベス女王の棺を運んだグレーの飛行機」実は米国製 垣間見える英空軍の転機
世界で惜別の声が溢れた、エリザベス女王の死。そのご遺体を運んだのが、ずんぐりとした胴体が特徴の英空軍「グローブ・マスターIII」輸送機でした。これはどのような機体なのでしょうか。
米空軍にむけ米国メーカーが製造したC-17「グローブ・マスターIII」
2022年9月、エリザベス女王が96歳で亡くなり、イギリスなど女王の配下にあった国はもちろん、世界中がその死を惜しみました。その後女王のご遺体は、毎年滞在されていたスコットランド・エディンバラまで陸送で運ばれたのち、ロンドンに航空機で戻ってきました。このとき女王を運ぶ機体として世界中の注目を集めたのが、ずんぐりむっくりとした胴体が特徴のグレーの飛行機でした。これは、イギリス空軍が運用しているC-17「グローブ・マスターIII」輸送機というもの。どういった飛行機なのでしょうか。
C-17「グローブ・マスターIII」は、アメリカのボーイング社製の軍用輸送機です。300機近くが製造され、イギリスでは当初4機をリースで導入しましたが、これらも完全購入に切り換え、現在は8機を保有しています。大きさは全長約55m、全幅約50m。サイズ的にはおおよそボーイング767旅客機と同じくらいですが、最大離陸重量は250トン以上と767の倍近くになります。
コクピットにはパイロット2名のほか、「ロード・マスター」と呼ばれる貨物責任者が搭乗します。胴体の上に主翼があり、その下に左右2基ずつターボ・ファン・エンジンを搭載する4発機で、尾部からの貨物搭載用の扉を取り付けるため、水平尾翼が垂直尾翼の上にあるのが特徴です。
C-17はアメリカ空軍からの要望をうけ開発されました。同軍では第二次世界大戦後、欧州域内などの比較的近距離空輸用の戦術輸送機としてロッキードC-130などを、アメリカ本国から欧州までの長距離空輸などを目的とした戦略輸送機として、ロッキードC-5などを導入していました。
C-17は、それらの機体の更新用に、同軍がマクドネル・ダグラス社(現ボーイング社)に発注したもので、テスト機として作られた「YC-15」のデザインがベースとなっており、長距離を飛行し、重い貨物を輸送できる性能を持っています。C-17は同軍における大型主力輸送機となり、C-141(131機)とC-5(285機)の後継機として279機が製造されました。
アメリカ空軍は、機体の正式名称の他に愛称を付けています。C-17の「グローブ・マスターIII」は、設計元のダグラス社(後のマクダネル・ダグラス社)が開発したC-74「グローブ・マスター」、C-124「グローブ・マスターII」といった、先代の輸送機の系譜にのっとったものです。
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