韓国空母は結局どうなった? 艦載機KF-21Nの先走り公開に見る政権の“やる気”

「むしろもっとでっかいのを!」の声

 韓国では前に述べたKF-21の導入計画に加えて、UAS(無人航空機システム)やUGV(無人車両)、AI(人口知能)を使用する意志決定システムなどを取り入れた陸軍の新戦闘システム「アーミータイガー4.0」、SLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)の運用機能を持つとも言われる海軍の島山安昌浩級潜水艦など、多額を要する防衛装備の更新計画が多数存在しています。

 筆者はこれらに比べれば優先順位の低いCVX計画の見直しは合理的な判断だと思いますが、この見直しに対しては、文在寅政権の決定を蔑ろにしたことに対するリベラル側からの批判に加えて、尹錫悦政権の支持基盤である保守派や軍関係者などからも批判の声が上がっています。

 尹錫悦政権による2023年度国防予算からのCVX計画の排除が明らかになり、それに対する批判の声が大きくなった2022年の夏以降、韓国ではにわかにCVXよりも大型の空母と、その艦載戦闘機としてKF-21の空母艦載機型の導入が取りざたされるようになりました。

 KF-21NとCVXよりも大型の空母が導入されれば、韓国の防衛産業、とりわけKAIの利益は大きくなるはずで、防衛産業にとってはこの計画を否定する理由はないと考えられます。

 筆者が知遇を得ている韓国人ジャーナリストは、あくまでも自分の推測だと断った上で、次のように話しました。

「KF-21Nが開発されることになったとしても、その作業が本格化するのは、早くても空対空戦闘能力を備えたKF-21の第一次生産分の開発が完了する2026年以降になる。尹錫悦政権の任期は2027年5月までの予定だが、KF-21Nの実現可能性の検討を進めている間に同政権の任期は終了する可能性が高い」

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文在寅政権の2021年11月に韓国海軍の公式動画に登場した軽空母のイメージCG(画像:韓国海軍の公式動画から抜粋)。

このことから、KF-21Nと同機を運用する大型空母の導入計画は、「CVX計画の後退に対する批判をかわし、かつ任期中に空母導入計画の意志決定をしないという尹錫悦政権の思惑によるものなのではないか」と述べています。

 この推測が正しいのかを判断するだけの材料を筆者は持ち合わせていませんが、韓国海軍の空母導入計画は韓国国内の様々な勢力の思惑が絡み合う、複雑なものであることは確かだと思います。

【了】

【画像で見る】韓国が公開した「軽空母」とその戦い方

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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