「世界最大のLNG燃料クルーズ船」が竣工 デカさ競争突入? でも「LNG=答え」にならなさそう
もう見えている「LNGの次」しかし課題も
LNG燃料船が竣工していく一方で、さらなる低炭素燃料への転換を見越した動きも始まっており、各船社は、選択の余地を残しつつ新造船を発注しています。
2022年7月にMSCクルーズがフィンカンティエリに発注したクルーズ船のうち2隻は、LNG燃料エンジンと水素燃料電池の両方を搭載。液体水素タンクなどが船内に置かれ、客室やパブリックスペースなどクルーズ船の運航に必要な電力を生産し、港内では純粋に水素燃料電池のみでゼロエミッション航行をするとしています。
商船では既存のインフラが使用できるメタノール燃料の導入が増えており、英船級協会ロイド・レジスターも「初期市場導入」へと移行したと評価しています。2022年に入ってから、デンマークの海運大手APモラー・マースクやシンガポール船社のXプレスフィーダーズ、AALシッピングが合計26隻のメタノール燃料船を発注。対応するエンジンやボイラーの改良なども行われており、サプライチェーンも広がりつつあります。
エンジンメーカーである独MANエナジー・ソリューションズも、現在はLNG燃料DFエンジンを最も多く受注しているものの、数年後にはメタノール焚き機関がDFエンジン受注量全体の約30%を占めるようになると予想しています。ただし、船舶の発注数に比べてグリーンメタノールやバイオメタノールの供給量が十分ではなく、こちらもまだまだ課題が残っています。
ノルウェーのケミカル船大手ストルト・ニールセンは、「海運業界は船種によって異なる燃料を選択することになる」という見解を示しており、次世代燃料は複数の燃料が並行して使われる可能性が高くなりそうです。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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