ビジネス化する「自動車盗」厳罰化へ被害者ら動く 犯罪の温床「ヤード」規制を国へ要望
非合法ビジネスの抑止にならない軽すぎる罰則
同会の要望を受けた警察庁は、自動車盗難の対策について、次のように話します。
「警察庁は関係省庁、民間団体で構成する『自動車等盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム』で自動車盗難等防止行動計画を策定。要望の趣旨にも留意しながら、引き続き計画に沿って、防止対策や事件捜査などに取り組みたい」
しかし、立法化の見通しはありません。
「新規立法の具体的予定は有しておりません。防止対策や事件捜査などにしっかりと取り組み、自動車盗難の状況の推移を注視します」(警察庁広報室)
全国で共通する問題について条例による規制が必要な場合、担当する省庁が条例の見本となる標準条例を地方自治体に示す場合があります。ただ、ヤード規制条例には複数の法律が関係することもあり、「おたずねのひな形については承知しておりません」(警察庁)など、地方自治体の自助努力に任されている状態です。
地方自治体の視点では、解体に伴う油や産業廃棄物などの環境規制が問題になることもあり、自動車ユーザーが期待する盗難抑止の趣旨がぼやけてしまうこともあるようです。
「車両盗難を厳罰化にする会」の有志は、ヤードの位置をマップで確認できる地図アプリの作成にも着手しています。
同会は盗難抑止力を高めるため、刑法235条に規定された窃盗犯の「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」を重くすることを求めて、署名を募り、昨年12月には警察庁ほか関係省庁を国会議員と共に訪れ、被害当事者の思いを訴えました。
「お金がなくて盗むのと、(希少車を)組織的に盗む行為は分けて考えてほしい」(@nt9woさん)
同会で活動する被害者の男性も、こう話します。
「自動車盗は完全に犯罪ビジネスになっている。分業が確立して足跡を残さない。ビジネスで窃盗をする人は、今のような刑罰ではやめない」
2023年1月13日には大阪府八尾市で手配中の盗難車を追跡中の警察官が発砲、運転者が死亡する事件も起きました。盗難が犯罪を拡大させる可能性もあります。自動車盗難は地域限定の課題ではありません。取り組みは充分と言えるのでしょうか。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
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