ロシアもう後がない? ついに最新戦車T-14をウクライナ至近へ配備した理由 ハッタリなのか?

T-14投入は自国民向けのプロモーション戦略か?

 まず考えられるのは、ウクライナとそれを支援する西側諸国への「ハッタリ」ですが、T-14が抱える問題点の解消が進まず、諸事情による量産の滞りも生じていることは西側に筒抜けなので、いまさら「ハッタリ」の効果はほとんど期待できません。

 それどころか、「ロシアが最新鋭戦車を投入したので、われわれ西側諸国もそれに対抗できる最新MBTをどんどんウクライナに提供しよう」となったらヤブヘビです。実際、最新モデルではありませんが、ドイツ製「レオパルト2」やイギリス製「チャレンジャー2」といった重量級MBTのウクライナへの提供が取沙汰されているのは、周知のとおりです。

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ロシアが誇る最新鋭戦車T-14(画像:ロシア国防省)。

 しかしここで注目すべきが、冒頭に記したように去年末、ロシアメディアがいち早くウクライナの戦線背後にT-14が配備されたと伝えたことです。

 ロシアメディアが世界に先駆けて自国最新戦車の動向を報じたというのは、うがった見方をすると、ロシア政府としては最新鋭の国産MBTを投入するほど「虐げられしウクライナのロシア同胞」の救援に力を入れているのだから、国民も祖国の「崇高な努力」に協力してほしいという自国民向けのプロモーション戦略、つまりプロパガンダとしての発信なのではないかと捉えることもできなくもありません。

 いずれにせよ今後、T-14が本当に実戦に投入され、先に無傷でウクライナに鹵獲(ろかく)されたロシアで2番目に新しいMBT、T-90M「プラルィヴ」のような事態が、同車にも起こるのかどうか興味深いところです。

【了】

【鹵獲&撃破されたT-90Mも】ロシア最新戦車T-14「アルマータ」を各アングルから 普段見られない上面まで

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Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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コメント

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1件のコメント

  1. う~ん
    正直、開戦直後なら”ウクライナなんぞは、T-80,T-90で鎧袖一触でT-14を使わなくても終わる。”と言うところだったのが、結局はT-14を出さざろう得ないし、さりとて出して撃破されては目も当てられないジレンマに陥っているのでは?
    ヒットラーの「ソ連は土台が腐った納屋だ。扉を一蹴りすれば倒壊する。」のデジャブだわな。