変わる沖縄の「備え」 米海兵隊の新しい姿「海兵沿岸連隊」が目指す戦い方とは?
海兵沿岸連隊は具体的にどう戦う?
それでは、海兵沿岸連隊は具体的にどのような戦い方を想定しているのでしょうか。
まず、海兵沿岸連隊は上記の各種部隊を各75から100名程度の小さな部隊に分け、それぞれに対艦攻撃や防空、兵站や情報収集などの特化した役割を持たせます。次にこれら部隊を、ヘリコプターやLAWを用いてあらかじめ島々に分散配置し、「遠征前進基地(EAB)」という小規模な拠点を設置します。
そして、この各EABが連携して、敵の艦艇や航空機の位置を把握してミサイル攻撃を実施したり、各種ジャミングを実施したり、各種補給拠点を設けて海軍の作戦を支援したりすることによって、たとえば空母を中心とする艦隊の安全な航行を支援するというわけです。
こうした小規模に分散された部隊は、航空機や衛星による発見が難しく、それが島から島へと素早く移動するという戦術をとります。これにより、敵からの攻撃を避けると同時に、敵の「情報・監視・偵察(ISR)」能力に大きな負荷をかけることも期待されます。
また、これは日本の自衛隊にとても他人事ではありません。現在、陸上自衛隊も島しょ防衛を主眼に置いた「水陸機動団」の編成や、各種長射程ミサイルの配備を進めています。そうしたなかで、在沖海兵隊が海兵沿岸連隊に改編されるとなると、たとえば自衛隊と連携を深めることで、海兵沿岸連隊が捉えた敵の艦艇を陸上自衛隊の対艦ミサイルが攻撃したり、あるいはLAWによって水陸機動団をはじめとする部隊を輸送したりすることなども可能になるかもしれません。
今回確認された海兵隊の部隊改編は、対中抑止のための大きな一歩となることでしょう。
【了】
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
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