歴代最高のカクバリ感!? 福井鉄道の新型車両が斬新だった 展望ロングシートに“ぼっち席”も
つり革には「目玉が動く越前がに」も
車内外全体を通しての大きな特徴としては、車イス利用者などに配慮したバリアフリー化があげられます。出入口には、ホームに段差がある場合でも容易に乗り降りできるよう、同社の車両としては初めてスロープが配備されました。また、座席をロングシートにすることで、通路幅は、クロスシートであるフクラムのおよそ2倍である1.7mを確保し、車内移動を助けます。さらにシートの2か所には、路線バスでも採用されている跳ね上げ式を採用。たたみ込むことで、車いすスペースとして活用できます。
車内で注目したいのは、一口にロングシートといっても、バリエーションが豊富な点です。車端部は車軸の関係上、他よりも一段高い場所に座席が設けられ、非常に見晴らしの良い「展望席」に仕上がっていました。一方、連接部分付近には1人掛けの「ボッチ席」もあり、その日の気分に合わせた座席選びが楽しめそうです。
素材やデザイン面では、地元「福井」への意識が感じられます。シートの表皮材は、県内で繊維製品の企画製造販売を行うセーレンが担当し、メイドイン福井を実現。福井の豊かな水資源や日野川の川の流れをイメージした、水色が基調の優しいデザインが、温かみある車内空間を演出していました。シートの製造にあたっては、要望に応じたデザインを、必要な量だけ作ることができるプロダクションシステムを使用し、環境面への配慮もなされています。またセーレン株式会社車輌内装事業部の水野彰夫さんによれば、「従来のシートとは異なり、コーティング剤が使われていないため、シートの取り換え時には、そのままリサイクルに回せます」とのことでした。
さらに車内を見渡せば、つり革の中には、沿線の西山公園の人気者「レッサーパンダ」や、福井の名物「越前がに」をかたどったデザインのものも交じっており、越前がにに至っては、揺れに合わせて目玉も動くというギミックがあります。このほか、観光振興の面から、福井鉄道では初めて車内モニターを導入し、4か所に設置しています。営業開始後は、地元や沿線エリアの観光資源を映像化して流すそうです。
福井鉄道の村田治夫代表取締役社長は「フクラムライナーは期待を寄せている新型車両です。2024年には北陸新幹線敦賀延伸、開業が控えています。ぜひ全国からフクラムライナーに乗りに来ていただきたい」と語ってくださいました。
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Writer: 蜂谷あす美(旅の文筆家)
1988年、福井県出身。慶應義塾大学商学部卒業。出版社勤務を経て現在に至る。2015年1月にJR全線完乗。鉄道と旅と牛乳を中心とした随筆、紀行文で活躍。神奈川県在住。
初代フクラムと比べると垢抜けない感じが…