横浜の名物船「ロイヤルウイング」買った意外すぎる企業たち 6度もオーナー変わった波乱万丈の半生

サンリオキャラクターとコラボしたことも

 2000年12月、今度は芸能プロダクションの吉本興業が「ロイヤルウイング」を購入し営業権を引き継ぎます。同社は船の営業と運航を担う「株式会社ロイヤルウイング」を設立。IHI磯子工場で大規模な改修を行い、2層吹き抜けの大ホール(カトレア)を船首下部に、VIPルーム(カサブランカ)をブリッジ後方にそれぞれ設けるとともに、より本格的な中華料理を提供したり、乗組員によるバルーンアートなどのパフォーマンスを行ったりするようにしました。このとき便数は、今に続くランチ、ティー、ディナー2回の計4便による運航形態となっています。

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横浜ベイブリッジをくぐるレストラン船「ロイヤルウイング」(深水千翔撮影)。

 ただ、吉本興業も6年ほどで手放します。次に「ロイヤルウイング」の運行を担ったのが、イベント会社の「モック」。2006年に「株式会社ロイヤルウイング」を子会社化しますが、わずか2年ほどで2008年5月に「サンリオ」へと売却。こうして「株式会社ロイヤルウイング」は同社の傘下に入ります。これにより、サンリオキャラクターとのコラボグッズや、ハローキティが誕生日を祝ってくれるバースデークルーズなどを展開するようになりました。

 しかし、サンリオも数年程度で手放してしまったようで、東日本大震災後の観光需要の大きな落ち込みを経て、横浜港を基盤に港湾荷役事業を展開する藤木企業が「株式会社ロイヤルウイング」を子会社化。こうして現在に至っています。

 こうして見てみると、35年もの長きにわたり一貫して横浜港を拠点に営業してきた「ロイヤルウイング」ですが、見えないところで、かなり流転の半生を歩んできたことがわかるでしょう。

「ロイヤルウイング」の運航開始時から勤めている石井義幸さん(マーケティング&プロモーションチーム推進役)は「豪華でなかなか乗れない客船と港内を巡る小さな観光船との間に、新しくレストラン船が入って来た。これは絶対に成功させたいという思いがあったし、船への愛着も大きかった」と話していました。

 実際、1960年に関西汽船の「くれない丸」として誕生し、その後「ロイヤルウイング」として2023年5月まで歴史が続いたのも、同船が持つ運の強さに加えてスタッフや乗船客など、多くの人に愛されていたからと筆者(深水千翔:海事ライター)は考えます。

「ロイヤルウイング」のファイナルクルーズは冒頭に述べたように、来る5月14日(日)です。長きにわたって活躍した名船の最後の勇姿を改めて見に、横浜港まで足を運んでみてはいかがでしょうか。

【了】

【舵輪デカっ!!】普段見られない「ロイヤルウイング」の船橋内部ほか

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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コメント

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1件のコメント

  1. 約50年前に家族旅行で神戸別府間で乗船しました。
    美しい船なのでどこかで再登板して欲しいですが難しいでしょうね…
    さんふらわあくれないも同じように愛されて長くの活躍を祈ります。