ミニバン=「商用車でしょ」からの脱却? 欧州勢が競争激化 日本の“お家芸車種”へ挑む理由

日本車の“聖域”に切り込め!

 特に欧州メーカーは、日本メーカーと違ってアメリカ市場で苦戦しています。それだけ、中国やアジア市場は重要です。そこでミニバンが熱いというのであれば、力を入れるのは当然のこと。今回のメルセデス・ベンツの新型「Vクラス」の予告も、そうしたアジア重視の姿勢の表れでしょう。

 とはいえ、欧米では、いまだにミニバンは「商用車」という意識が強いようです。実際のところ、「ドブロ」をはじめとするステランティスの3兄弟ミニバンも、ルノー「カングー」も、メルセデス・ベンツ「Vクラス」もすべてが商用車をベースとしています。

 一方で、日本の場合は、ミニバンであっても商用車と乗用車は、まったく別のものとなっています。そのため、日本の乗用車のミニバンは、床が非常に薄く、そして低くなっているのが特徴です。その結果、日本の乗用ミニバンは、圧倒的な乗り降りしやすさを手に入れました。

 また、シートをきれいに畳んで収納する、細かなカラクリは、日本のお家芸。この乗用車専用プラットフォームと、多彩なシートアレンジは、日本のミニバンならではの強力な優位性となります。この優位性を生かして、日本やアジア地域で高い人気を得ているというのが日本のミニバンの現状です。

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ルノー新型「カングー」。日本向けにわざわざ黒の樹脂バンパー、観音開きリアドア仕様を用意している(画像:ルノー)。

 もちろん、欧州勢も日本のミニバンに負けてはいられません。欧州ブランドならではの秀逸なデザインや優れた高速走行性能、そしてプレミアム感は、欧州ミニバンの魅力となります。ステランティスの3兄弟ミニバンや、ルノー「カングー」は、日本車にないデザインが強みとなっています。また、新しい「Vクラス」は、他の乗用モデルと同様にインフォテインメントシステムMBUXの最新版を採用するなど、よりモダンでラグジュアリーなモデルとなるようです。

 こうした欧州ミニバンの努力によって、日本やアジア市場で先行する日本製ミニバンを、どれだけ追撃できるのか。新しい「Vクラス」は、どれだけ魅力を高めているのか。その出来に注目です。

【了】

【おいエンブレム立ってるぞ】強烈な見た目になるベンツの新型ミニバン(画像)

Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。

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