「南極基地の生命線」空軍の多目的ヘリが動かない! 世界情勢の急変でメド立たず アルゼンチン

アルゼンチン空軍が2機しか保有していない多目的ヘリコプターMi-171Eが、2020年8月以降、諸問題で飛べない状態のようです。これにより南極の基地への影響が懸念されています。

ロシアの問題で整備計画が宙に浮いた状態に

 アルゼンチン空軍が2機しか保有していない多目的ヘリコプターMi-171Eが重大な課題に直面していると地元メディアが報じています。それによると、2020年8月以降飛べない状態が続いているようです。

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アルゼンチン空軍の保有するMi-171E(画像:アルゼンチン空軍)。

 同機は、アルゼンチンがロシアから2010年に購入したものです。これまで遭難者捜索や人命救助任務のほか、南極にあるマランビオ基地での輸送任務などに使われていました。

 運用開始から10年後の2020年8月、飛行時間が規定に達したことを受け、大規模な整備を実施するためロシアに機体部品の一部を引き渡し、機体寿命を伸ばすことになっていました。

 しかしこの作業は、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で難航し一時中断状態となります。さらに、2022年2月にはロシアがウクライナへの侵攻を開始。北大西洋条約機構(NATO)の構成国など、いわゆる西側諸国が行ったロシアに対する経済制裁のため、ロシアへの支払いを完了させる銀行を見つけることができなくなり、完全に宙に浮いた状態になっています。

 2機のヘリコプターは2023年5月現在、アルゼンチン国内のキルメスにある軍施設に使用されないまま放置されているそうです。同機はアルゼンチン軍にとって貴重な多目的ヘリコプターで、この機体が失われると、南極にあるマランビオ基地への輸送に大きな影響が懸念されます。まだ一時使用停止という状態ですが、今後の見通しは全く立っていません。なお、ロシア以外の会社に整備を依頼するという案も出たそうですが、今のところ話はまとまっていないようです。

 アルゼンチン空軍は南米国家の中でも資金繰りにかなり苦労している軍隊のひとつで、民主化以降の40年近く、予算は増えるどころか減っている状況です。特に2015年以降は航空機のメンテナンスの欠如が問題視されています。機体の将来的な保守点検のプランが破綻している状況は、同軍にとって珍しくはないようで、地元メディアも「アルゼンチン空軍が直面している課題を浮き彫りにしている」と、呆れともとれる報じ方をしています。

【了】

【南極の基地どうするの!?】マランビオ基地への輸送を担当していた頃のMi-171E(写真)

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