「鉄道を破壊する抗日ゲリラ」にどう対処? 旧日本軍が中国大陸で展開した“治安維持”の方法

日中戦争において、日本軍は中国の北部から中部地域までその勢力圏を広げました。その広大な占領地を結ぶ鉄道を遮断しようとする中国の抗日ゲリラに対し、日本軍は現地住民を巻き込んで「鉄路の戦い」を繰り広げました。

「愛路村」沿線村落に鉄道を守らせる

 こうした状況に対し、華北交通は1941(昭和16)年、路線を防護し治安維持を行う組織として、それまでの「鉄路愛護会」に代わって「愛路委員会」を設置しました。

 同委員会の施策は「愛路工作」と呼ばれ、沿線両側5kmを対象地域として、その範囲内の村落を「愛路村」として設定するものでした。

 この愛路村は、日本軍の鉄道防護のためのゲリラ討伐に人馬を供出する必要がありました(のちに村が所属する県が負担)。

 愛路工作の最終的な目的は、中国の地元住民に鉄道を保守させるものでした。つまり中国住民が中国人ゲリラから線路を守る、というかたちです。

 片や華中鉄道の管内では、「愛路課」が「愛路区」を設定して、その任に当たりました。むろん愛路課だけでは、全ての鉄道を守ることは無理なので、ここでも現地中国人に負担がかかりました。

 路線の治安のために動員されたのは、中国人による自衛団、青年団、少年団などでした。これらの組織に所属する中国民衆は1944(昭和19)年3月の段階で220万人が登録されていました。当然ながら、このうちかなりの人数が、中国国民党や中国共産党と通じていたでしょう。今にも通じる、現地住民を治安工作の肩代わりにつかった場合のリスクです。

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愛路村と愛護地帯の概念図。鉄道沿線の両側5kmを愛路地帯として、その範囲を愛護村の責任で防備した。1942年には北支交通管轄下の愛護村は1万277村が存在した(樋口隆晴作図)。

 ともあれ、こうした中国人の組織を、その地域に駐屯する日本軍部隊が指揮監督して鉄道を守る任務につきました。やがて、日本軍自体の治安作戦もある程度は有効に働くようになっていきました。日本軍は、治安地区と未治安地区(敵性地区)に遮断壕とトーチカを構築したり、未治安地区へ積極的に攻撃をしかけるようになります。

 こうして華北地域の遮断壕の延長は1万1000km、トーチカの個数は7000個にものぼりました。むろんこれらの遮断壕やトーチカは現地住民を徴発(強制的に使役)して構築されました。しかし、こうした遮断壕や未治安地区の封鎖は、結果として地場経済を破壊するものとなり、現地の中国の民衆は日々、経済的な困難に見舞われる結果となりました。

 このように、現地でさまざまな問題が発生していた一方、これらの活動によって鉄道に対する襲撃は減少し、華北地域では1941(昭和16)年に1224件だったものが、翌年には294件減の930件に、1943(昭和18)年には、鉄道以外にも抗日ゲリラの襲撃が増えたにもかかわらず、なんとか41年と同じ1224件に収まりました。

【まさに「点と線」】中国大陸に敷かれた日本の鉄道と「治安地域」(路線図)

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