建屋吹き飛ぶ大爆発 新型ロケット「イプシロンS」試験中に JAXA正念場か 何があった?

新型ロケット「イプシロンS」&能代実験場とは?

「イプシロンS」は、現在運用中の「イプシロン強化型」の後継モデルとして開発が進められている国産の新型ロケットです。さらなる打ち上げ能力の向上を目指しており、強化型が高度500kmに590kgというスペックであったのに対し、「イプシロンS」は高度350~700kmに600kgと、より高い軌道に人工衛星を運べるようになっています。

 全体は4段式で、第1~3段が固体燃料推進、第4段(PBS)が液体燃料推進という構成です。第1段は、これまた最新型の国産ロケット「H3」のSRB-3(固体ロケットブースター)をベースに必要な機能を追加したもので、第2段と第3段は従来使っていたモータをベースにサイズアップし、高性能化を図ったものとなっています。

 第1段は2020年2月29日に種子島宇宙センターで、第3段は2023年6月6日に能代ロケット実験場で、それぞれ地上燃焼試験に成功しており、今回の第2段の試験が成功すれば、開発はいよいよ最終段階を迎えるはずでした。

 一方、テストが行われた能代ロケット実験場は1962年に開設されて以来、固体ロケットモータの開発を中心に試験を行ってきた実績のある場所です。60年もの長きにわたって多くのテストが行われてきたため、なかには失敗したケースもありますが、建屋を吹き飛ばすような事故は、過去の記録を見る限り初めてだと思われます。

 今回の実験では、真空燃焼試験棟と呼ばれる建屋内に設置された大型の真空チャンバーを用いていました。とはいえこれは設備の都合によるもので、今回は真空引きにはせず、試験は大気開放で実施しています。

Large 230717 noshiro 02

拡大画像

取材に応じる井元プロジェクトマネージャー(画像:東京とびもの学会)

 事故を受け、当日13時ごろに現地で報道陣らに説明を行ったJAXAの井元隆行イプシロンロケットプロジェクトマネージャーは、今後の試験地について問われた際に「能代実験場で行うのが基本だと考えているが、状況次第では種子島での実施なども考えていかなければならない」と述べていました。

「イプシロンS」の2段目ロケットを実用化するためには、最低1回は試験を成功させデータを取得する必要がありますが、前述の通り設備に破損が見られるということなので、。その度合いと、修復までの期間および費用が気になるところです。

 今回、人的被害がなく火災も短時間で終わったことは幸いですが、事故による開発期間の見直しは不可避でしょう。計画では「イプシロンS」は2024年度に初飛行の予定でしたが、スケジュールはやや不透明となっています。

【え…大丈夫?】数百mにも昇った白煙 爆発地点の内外(写真)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

1件のコメント

  1. 今になってもまだ「イプシロンS」と呼んでるのか理系学会の内部者たちは。
    対外的には「エプシロンS」と言わなければ通用しないはずだが