建屋吹き飛ぶ大爆発 新型ロケット「イプシロンS」試験中に JAXA正念場か 何があった?

JAXAにとっては正念場か?

 失敗の原因については、冒頭に述べたとおり現時点では不明なため、これから詳細なデータを検証する必要があります。

「イプシロン」というと、昨年(2022年)10月に打ち上げ失敗した6号機が、記憶に新しいところです。あれから半年あまり経ち、そのときの失敗原因が解明されたことで、打ち上げ再開が見えてきた中で今回の事故が重なったのは、JAXAを始めとした関係者にとってダメージといえるでしょう。

 ただ、井元プロジェクトマネージャーは「最後の燃焼試験で異常が発生したのは残念です。しかし、これからしっかり原因を究明し、イプシロンSの設計に反映していくことが信頼性の向上に繋がります」と前向きのコメントをしています。

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試験開始前の報道・一般見学所の様子(画像:東京とびもの学会)

 現在、着火後20秒過ぎから燃焼圧力が予想より少し高くなって、爆発時は約7.5MPaになっていたことがわかっているそうです。ただし、モータのケース自体は最大使用圧力8.0MPa、耐圧試験での圧力10.0MPaとなっているため、設計上の許容圧力内だったと考えられます。また、爆発までノズル駆動は正常だったということです。

 なお、爆発したモータの大部分は、試験を行っていた真空燃焼試験棟内外に飛散しており、安全の観点から一部飛散物を回収したとのことでした。

 井元プロジェクトマネージャーは、事故は予想できたのか、事前に兆候はなかったのかとの問いに「想定外。予定通り燃焼すると考えていた」と答えています。「想定外」という点では、取材していた筆者もまた同様の思いです。しかしながら、起こる事象をしっかりと見定めていくのが試験の役割でもあります。E-21モータ燃焼試験は当初想定のデータ取得こそ果たせず失敗しましたが、新たな課題を明示してくれたとも考えられます。

 2022年10月の「イプシロン」6号機、2023年3月の「H3」初号機、そして今回の地上燃焼試験と、日本の国産ロケットに関して失敗が重なったことで、JAXAは発足20年目にして試練を迎えたといえるでしょう。

 しかし、「失敗は成功の母」の言葉どおり、一歩ずつ着実に原因究明を行えば、成功への道は拓けるはずです。ここで立ち止まらず、さらなる信頼性の向上が行われることに期待しています。

【了】

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コメント

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1件のコメント

  1. 今になってもまだ「イプシロンS」と呼んでるのか理系学会の内部者たちは。
    対外的には「エプシロンS」と言わなければ通用しないはずだが