なぜ東京に? 台湾の巡視船 が10年ぶりに寄港中 “台風から避難”は表向きの理由か

台湾本土まで戻るよりも日本の方がベターなワケ

「巡護八号」の船体は各国の巡視船と同様に白を基調としつつ、側面にローマ字で「TAIWAN」「R.O.C. COAST GUARD」と国名と所属機関が大きく書かれています。このうち「TAIWAN」という文字は2021年に追加されたもので、最新の塗装が施されているのがわかります。

 一方、船首両舷には献身を表す「赤」と、台湾を表す「T」、海を表す「青」で構成された三色のレーシングストライプが描かれています。船首には海巡署のエンブレムを中央に配置した旗が掲げられていました。

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台湾の巡視船「巡護八号」の船体側面。所属が大きく書かれている(深水千翔撮影)。

 今回、なぜ「巡護八号」が東京港へ寄港したかというと、これは連続して発生した台風とパトロールエリアが関係しています。

「巡護八号」は7月15日に台湾の高雄を出港し、太平洋上で漁船の違法操業を監視するためパトロールを実施中です。これまで海巡署の巡護船が公海でパトロールを行う場合は、外交関係を持つマーシャル諸島やパラオといった国々に寄港して補給を行っていました。今回は日本周辺を含む西太平洋地域で活動していたうえ、台風6号と台風7号が相次いで発生し海象条件が悪くなったため、台湾へ戻るより東京港へ寄った方がより確実に整備と補給ができると判断したのでしょう。

 補給と整備を終えた「巡護八号」は、東京港を出港して再び公海パトロール任務を行い、9月12日に台湾へ帰港する予定です。8月21日には農業部漁業署の漁業訓練船「漁訓貳號」が東京港に寄港しており、晴海ふ頭は台湾の官公庁船が相次いで接岸することになりました。

 ちなみに北太平洋の公海上では、サンマやサバなどを保存管理する北太平洋漁業委員会(NPFC)の加盟国・地域である日本、カナダ、ロシア、中国、韓国、アメリカ、バヌアツ、台湾、EU(ヨーロッパ連合)が、相互に乗船検査を行えるようになっています。同エリアには中国と台湾の漁船が数多く進出していることから、台湾政府も操業の実態把握と自国民の保護を目的にパトロール強化を図っています。

 そのため、今後も台湾の巡視船が、本土に戻るより距離的に近い日本の港に寄る方が良いと判断すれば来日する可能性が高いです。ゆえに、ひょっとしたら近い将来、東京港にまた台湾の巡視船が来航するかもしれません。

【了】

【なぜここに?】豊洲市場をバックに接岸する台湾の巡視船「巡護八号」全景(写真)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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