「バイク危ない!」に反応せず? 車の自動ブレーキ試験「対バイク」がやっと評価対象に なぜ今更?

クルマの運転中、歩行者などを検知してアラートやブレーキで運転を支援する予防安全性能。この性能評価で、対クルマ、対歩行者、対自転車に加えて、ようやく対バイクが評価試験の対象なります。なぜ今まで対象ではなかったのでしょうか。

自動ブレーキ「対バイク」は評価していない

 国土交通省は、より安全なクルマの普及対策として自動車アセスメント(安全性能評価)を実施し、自動車事故対策機構(NASVA)が毎年、5つ星対象など優れた車両をランキングしています。たとえば、歩行者などの飛び出しを想定し、衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)が効果的に作動するかなどを試験しています。
 
 この評価試験で対象としているのは、対クルマ、対歩行者で、2022年度から対自転車も加わったものの、バイクは試験対象から除外されていました。しかし2025年の予備試験開始を目指して、対バイクを認識する評価方法の検討が始まっています。都市部で目立つバイク事故を減らすことが期待されます。

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日産が独自に実施し公開した、交差点で緊急回避操作を自動で行うデモ。対バイクの評価は、自動車アセスでは実施されていない(画像:日産)。

 NASVAが公表する自動車安全性能ランキングは、自動車メーカーのカタログ値だけではわかりくい安全性能について、項目別に試験を実施し、予防安全性能と衝突安全性能の2つの性能を総合的に評価し、ユーザーのクルマ選びに役立っています。

 この自動車アセスの予防安全評価の分野で、初めて対バイクの試験実施に受けた検討が2023年度から始まっています。「小さく、素早く動く二輪車は、検知が難しく技術としても確立していない」(評価検討委員)と、対バイクの試験は実施されていませんでした。高い予防安全性能があるとされるクルマでも、実はバイクを認識するかどうかは定かではなく、その評価はされていなかったのです。

 しかし、クルマの右折時に、対向から直進するバイクを見落とす右直事故が重大事故につながりやすいなど、対バイク事故の防止が意識されるようになったこと。また、安全性能の向上で対バイクの衝突安全機能が現実的になったことなどから自動車アセスのための試験・評価方法の検討が始まりました。

 2023年度から2年かけて試験・評価方法を検討し、2025年度に予備試験を実施。2026年度から継続して試験を実施し、対バイクの評価を含めた自動車アセス・ランキングが公表されるようになります。

 また、同じタイミングで、交差点でのクルマ対クルマの出会い頭事故を想定した試験も始まります。

 ちなみに、安全性能に対する関心が高くなるにつれ、ディーラーなどの販売促進でも自動車アセスランキングは活用されていますが、メーカーや販売店が費用負担しているわけではありません。

 自動車アセスの費用は、自賠責保険加入者が負担する保険料の運用益や、今年度から新たに加入者が負担する「賦課金」を使っているのです。自動車アセスの評価でより高い安全性能の車両が支持されることになれば、より交通事故を減らすことができる、という考え方に基づく施策です。意外なところでは、チャイルドシートアセスメントも、同じ枠組みで実施されています。

 自動車アセスは数年先ですが、対バイクの予防安全性能については、各メーカーが開発しています。例えば、日産は次世代LiDAR(ライダー)を活用し、交差点での対バイクの予防安全技術を搭載した試作車を公開しています。安全のための先進技術が何に対して有効なのか。少し踏み込んで考えてみると各社の違いがわかってきます。

【了】

【え…】「危なーい!!」を再現する自動車アセスメント(写真)

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