ハンヴィーと全然違う! 原型ベンツGクラスの新軍用車「カラカル」の実力 元米軍将校も感服
「空挺車両」の名は伊達じゃなかった!
とはいえ、JLTVは当時問題になっていたIED(テロリストが多用する即席爆破装置)への生残性を最優先するあまり、サイズも重量も「ハンヴィー」とは比べ物にならないほど大きくなくなってしまいました。「ハンヴィー」は装甲の有無により大きく異なるものの、重量は2.2~4.6tです。
それに対して、JLTVに採用されたオシュコシュ社の「L-ATV」は6.4t(装甲は固定式で外せない)もありました。これはアメリカ国防総省が出したRFI(いわゆる仕様要求書)通りに造っただけで、メーカーに罪はないのですが、実物を見たら筆者も思わず「やりたいことは理解できるけど、ここまでデカくなっちゃったか…」と、ため息をついたほどです。
国防総省はのちに「JLTVはハンヴィーの後継というわけではない」とも言いましたが、言い訳としてはちょっと苦しい部分があるでしょう。
ちなみにアメリカ軍には、こうした例が少なくありません。たとえば1990年代に行われた特殊部隊向け拳銃の開発、SOCOMピストル計画では、過大な要求を並べたRFIを提示した結果、バカでかい拳銃ができあがってしまい、「珍銃」として歴史にその名を残しています。筆者としては古巣の悪口を言いたくありませんが、ホント進歩がないのは呆れます。
話を「カラカル」に戻しましょう。前述のとおり同車の装甲はモジュラー式であり、任務に応じたセットアップが可能です。エンジンとサスペンションは増加装甲や、RWS(リモート武器システム)、対戦車ミサイルのような重装備の追加にも対応可能で、車内も拡張性が考慮された造りになっています。
最大重量は4.9t、空輸時は最大4.4tで、サイズは「ハンヴィー」とほぼ同じ。これなら問題なくC-17輸送機からパラシュートでヘヴィー・ドロップ(重量投下)できるし、CH-47輸送ヘリコプターならスリング・ロード(吊り下げ輸送)も行えます。
アメリカ陸軍で言えば、空挺(Airborne)の第82空挺師団と、空中強襲(Air Assault)の第101空挺師団、両方の部隊とも運用可能で、「空挺車両」という謳い文句は伊達ではないと言えるでしょう。
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