ハンヴィーと全然違う! 原型ベンツGクラスの新軍用車「カラカル」の実力 元米軍将校も感服
軍用高機動車両の世界標準になるかも
ラインメタルのブースで同社社員から、こうした説明を聞いているだけで空挺部隊OBとしては嬉しくなりました。筆者が「ハンヴィー」で不満に思っていた点がすべて改善されていたからです。
ただ、ここで筆者が気になったのは、対IEDについてはどう考えているのかという点です。
そこで、ラインメタル社員に「底部がV字(防爆構造、JLTVは採用)になっていないが、IEDには対応できるのか?」と聞くと、その回答は「IEDのサイズ次第ですね。底部にも防弾/防爆パネルは敷いてありますが、対戦車地雷(もしくは同程度のIED)には耐えられません」というものでした。
とはいえ、これは当然とも言えます。対戦車地雷は重量60t近い戦車を吹き飛ばすほどの威力があります。そうなると、車重5t程度の支援車両など、空高く吹き飛んでしまうでしょう。対戦車地雷を踏んでしまったら運が悪かったと諦めるしかありません。要は、防御力と使い勝手のバランスが重要なのです。
2023年9月現在、「カラカル」はドイツ軍とオランダ軍が採用を決めています。これを受け、今年からラインメタル社は同車の量産体制に入っており、すでに独蘭両軍には配備が開始されているそう。ラインメタル社員によれば、国名は明かせないものの、今後は欧州内外の軍への販売が予定されているとのことでした。
ロンドンで「カラカル」を実際に見た結果、筆者は2020~2040年代における軍用高機動車両のディファクト・スタンダード、すなわち「事実上の世界標準」になる可能性があると感じました。なぜなら、他に競争相手となる有力な車両が存在しないからです。
そこで、防衛力の急拡大を目指している自衛隊も採用を検討してみてもよいのではないでしょうか。変化の著しい現代戦の環境に、幅広く対応できる「カラカル」には、その価値があると筆者は考えています。
【了】
Writer: 飯柴智亮(元アメリカ陸軍将校)
東京都出身。州立北ミシガン大学在学時に米陸軍予備役士官訓練部隊(ROTC)で訓練を受ける。1999年、米陸軍入隊。第82空挺師団に所属しOEF(不屈の自由作戦)に出征。2005年、少尉任官。ストライカー旅団などで勤務。2009年除隊。国際政治学修士。極真空手初段。
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