“水陸両用“なのにタイヤなぜ!? 米海兵隊の最新戦闘車「ACV」元米軍将校が現場目線でチェック!

浮航性よりも陸上走行能力を重視

 AAV7は、2003年からのイラク戦争では歩兵戦闘車・装甲車として使用されました。かつての水陸両用車が上陸の用途しかなかったのに対して、陸上で移動する能力、そして戦闘を継続する能力が求められたのです。改めて見ると、AAV7が「水陸両用車っぽい」外見をしているのに対して、ACVは一見すると通常の装輪装甲車と変わりません。筆者も、よく見るまでは新型の兵員輸送車だと思ったほどです。つまり、上陸後の能力を重視したからだと言えるでしょう。

 それを示すように、水上のスピードはAAV7が約13km/hだったのに対し、ACVは約11km/hとわずかに遅くなっています。推進方式も、高速向きなAAV7のウォータージェットから、ACVでは簡易なスクリュー式となりました。今日では第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦のような、敵が待ち受ける海岸に力押しで上陸するような状況は考えにくいため、そもそも論として海上・航空ともアメリカが優勢を確保していることが前提になっているのでしょう。

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アメリカ海兵隊が半世紀にわたって使い続けているAAV7水陸両用戦闘車(画像:アメリカ海兵隊)。

 他方で、水上ではAAV7より遅いかもしれませんが、陸上ではACVが勝っています。これは足回りが装軌(履帯式)から装輪(タイヤ式)になった点が大きな理由で、ゆえに舗装路なら、AAV7が約72km/hまでなのに対し、ACVなら約105km/hで疾走することが可能です。

 ここから、水上や上陸直後よりも、上陸後の展開、それも市街地や舗装道路における機動性が重視された設計であることが理解できます。COE(Contemporary Operational Environment:現代の運用環境)を考えれば、当然の帰結でしょう。

 加えて、ACVは完全なモジュラー設計を採用しています。基本型である人員輸送型(ACV-P)のほかに、指揮通信・偵察型(ACV-C4/C4UAS)、回収型(ACV-R)などの種類があります。特にACV-C4UAS型はISR/カウンターISR能力に優れているとか。詳細は不明ですが、これにより部隊の生存性を大きく向上させると言われています。

【おお、浮いてる!】ACVの水上航行シーン 車体後部のアップも(写真)

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