「どっかで見たような…」中国国産の新型練習機デビュー “国営メーカー”の数奇な成り立ち 世界市場を席捲するかも?
「米国製の姉妹機は当分販売せず」の真意
今回公開されたAG100は、141馬力のロータックス社製エンジンを搭載した3人乗り。前席に練習生と教官が乗り、その後ろにオブザーバー席があります。
ロータックス製エンジンが採用された理由は、航空燃料以外にも自動車用燃料が使用できるメリットがあるからです。中国国内では航空ガソリンの価格は日本より高いため、代わりに自動車燃料を使用することで飛行コストを低減させることが可能になります。
なお、中国ではAG100は国内開発機と発表されていますが、機体の形状とコックピットのデザインはシーラス社のヒット商品、SR20シリーズに酷似しています。それもそのはず、シーラスの担当者自身が、機体は親会社であるAVICとの契約に基づいて自分たちが開発したモデルだと明言したのです。
つまり、AG100は中国企業の機体ではあるものの、実体はアメリカで設計・開発されたモデルだといえるでしょう。アメリカではSR10の名で開発され、すでにFAA(米国連邦航空局)の型式認証も取得しています。そのSR10の開発に並行する形で、中国でもAG100の開発が進められたというのが実情です。なお、すでに中国でも型式認証の取得に向けて飛行試験が始まっています。
ちなみに、シーラスはSR10を開発したものの、同モデルをアメリカ国内で販売する計画は今のところないとのこと。その理由は、SR20シリーズの受注が好調で、生産に余力がないからだといいます。そのため、シーラスとしては当面、SR10の機体コンポーネントを中国へと輸出、同国国内で組み立てられた機体がAG100として販売される模様です。AG100はすでに受注も獲得しており、型式認証の取得に続いて受注した機数が生産される見込みです。
このようにAG100は、実はアメリカメーカーであるシーラスとの共同開発という体で誕生しています。ただ、このやり方はAVICと中国民用航空局にとっても大きなメリットをもたらします。というのも、シーラス製の機体を自分たちが扱うことで、世界的に遵守されているアメリカの安全基準と認証方法、関連ノウハウなどを習得することが可能になるからです。
そのため、AG100に続く機体は名実ともに中国国内で開発・生産され、世界中に輸出されるようになるものと筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事)は考えています。
これらを鑑みると、セスナを筆頭に欧米メーカーがシェアのほとんどを占めている軽飛行機の分野でも、中国が台頭するのはそう遅くはないようです。
【了】
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
規制はよ