自転車も「即違反!青切符!」は誤解? “見えないところで摘発の嵐”の懸念に国家公安委員長は

自転車の違反処理にいわゆる“青切符”が導入される見込みです。巷では摘発が増えるのではないかという懸念もあるなか、この青切符違反処理について、警察庁を指導する松村祥史国家公安委員長が言及しました。

制度の運用は“青切符”ありきではない

 自転車の違反処理について、警察庁の有識者検討会が反則金通告制度、いわゆる“青切符”を導入する報告書(良好な自転車交通秩序を実現させるための方策に関する中間報告書)をまとめました。2023年12月26日、松村祥史国家公安委員長はこの導入について、次のように話しました。

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「指導・警告をまず原則」と語る松村祥史国家公安委員長(中島みなみ撮影)。

「違反の処理につきましては、自転車利用者による交通違反を交通反則通告制度の対象とすることが提言をされておりますが、制度の運用にあたっては、指導・警告をまず原則といたします」

 運転免許が必要な車両と同様に、自転車の違反処理を行う方針を打ち出した有識者検討会は報告書で、自転車の取締りの課題をこうまとめていました。

《自転車の交通違反が検挙された際には赤切符等によって処理されているが、犯罪行為として例外なく刑事手続きの対象とされており重すぎる面がある一方、送致されたとしても、結果として不起訴になることが多く、違反者に対する責任追及が不十分であるという問題も指摘されている》

 青切符が適用される“反則”は犯罪行為に当たりません。違反者が同意すれば裁判手続きが不要で、反則金を納付することで決着します。

 一方で、制度が導入されると、自転車を対象にした手軽な摘発が行われるのではないか、という不信感も利用者の間に広がりました。現実にクルマの違反摘発では、運転者から見えない場所での摘発を問題視するSNSの書き込みが絶えません。同じことが、自転車でも起きるのではないか、という懸念が広がっています。ただ、松村委員長は、これを打ち消します。

「報道等では、違反即、青切符というようなイメージが残っておりますが、交通ルールを守っていただき、結果的に事故が起こらないことが、私どもの目的でございます」

 ただ、青切符導入のきっかけは、交通事故全体に占める自転車が関係する事故の割合が上昇し続けていることや、自転車と歩行者の事故件数も増加傾向であることなどが原因です。「自転車は取締りを受けない」という誤解の元に、違反者が警察官の指導に従わないこともありました。反則金の納付を求める場合は、こうしたケースです。松村氏は話します。

「指導・警告に従わないなどの特に悪質、あるいは危険な違反に限っては、青切符による取締まりを行うことにより、(取締りの)目的である違反者の行動改善を促すこと、こういった取り組みをしっかりとやってまいりたいと考えております」

 その一方で、飲酒運転や、他の交通への妨害運転、交通の妨げになる携帯電話の運転中の使用には、今までと同じく刑事事件としての処理“赤切符”を活用します。

 警察庁は2024年の次期通常国会で、この報告書の案に沿って法改正を行う方針です。

【了】

【画像】これが「反則金」徴収になるケースです!

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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