羽田航空機衝突事故で見えた「除け者」成田空港の重要性 有事でこそ見えたその“存在意義”とは
「いざというときの成田」!その理由とは?
加えて、成田空港は1978年の開港から24年後にようやく2本目の滑走路の供用が始まったため、それまでは遠いうえに滑走路が1本しかなかった、“黒歴史”があります。さらに、2010年に入り羽田空港で4本目の滑走路の供用が始まると、海外のFSA(フルサービスを行うエアライン)と呼ばれる航空会社は“羽田シフト”を取り、ここでも成田空港の“地盤沈下”が懸念されました。
現在は、LCC(格安航空会社)の誘致に成田空港は成功し、「羽田と成田で各々年間50万回の年間発着数を実現する」を合言葉に、羽田と成田ともに整備は進められていますが、いつまた「成田不要論」が再発するか、関係者は内心穏やかではないと聞いています。
実際、多くの乗客は、飛行時間が1時間から1時間半程度の場合は都心と往復する際に成田空港を使いたいかという問いに、頷くことはできないでしょう。しかし、今回の事故のような場合は、立派に国内航空網へ役立つことがわかりました。また、4000mある成田空港のA滑走路は、羽田空港をいったん離陸した長距離国際線が、「テクニカルランディング」と呼ばれる燃料の追加給油にも役立ちました。
加えて、元日に能登半島を襲った震度7のような地震が都心で起きれば、東京湾を埋め立てた羽田空港は液状化の恐れがあります。成田空港も被害は免れないかもしれません。しかし、成田は内陸空港のため、復旧は羽田から早い可能性も高く、都心へ救援物資を集める助けになります。
それゆえに、首都圏への空路アクセスを絶やさぬよう、羽田・成田の首都圏2空港体制はこれからも維持する必要があると、筆者は考えています。
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Writer: 清水次郎(航空ライター)
飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。
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