「16年前の中国製ジェット旅客機いかが!」海外航空ショーで猛アピール? 2機ズラリ並べたワケ
「今更だろ?」ともならない…猛アピールもごもっともなワケ
ARJ21は中国国内の型式証明は取得しているものの、グローバルスタンダードであるFAA(米連邦航空局)の型式証明は未取得です。
型式証明は、その飛行機のモデルが一定の安全基準を満たしているかどうかを、国や地域ごとに当局が審査する制度で、実用化には不可欠なプロセスのひとつです。これをクリアすることで、メーカーが(取得前より大幅に項目が省略された)所定の検査を実施するだけで航空会社に引き渡せるようになります。
FAAの型式証明を取得していないことから、ARJ21は長い間、中国の航空会社が国内線でのみ運用していました。しかし、2023年にインドネシアのトランスヌサ航空で就航し、初の海外進出を果たしています。
シンガポール航空ショーでの複数機の展示は、生産態勢が整い実績も積み、航空会社にいつでもセールスでき、ひいては世界市場に参入できる――。この機を強くアピールしたい中国の思惑があると考えられます。
2024年現在のリージョナル・ジェット市場は、前年に日本のスペース・ジェット(三菱重工)が開発中止となったこともあり、ほぼブラジルのエンブラエルが独占している状況です。
これは価格交渉でエンブラエルが優位に立ちやすく、その点を嫌う航空会社も出てくるでしょう。中国はここにARJ21の参入のチャンスがあると踏み、一気に2機を展示することで猛烈なアピールを世界的に行い「本格攻勢」を試みたのかもしれません。
【了】
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
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