空中給油機、実は「地上でも他機に給油」できます! めったに見られないレア運用が行われた「国難」とは
3.11が変えた?空中給油機による「出張ガソリンスタンド」の使い方
東日本大震災ではFARPにより、被災地に近い拠点で燃料補給を行うことで効率的な救難救助活動が可能になることを実証しました。これはFARPに対する評価に変化をもたらしました。
それまでFARPは軍事作戦における使用だけを想定して実用化され装備されてきましたが、山形空港での実績により、人道的支援を目的とした作戦においても、FARPの有用性が認識されることになったのです。
地震国の日本では2024年、能登半島で大地震が発生しました。道路が寸断されて被災地への物資の輸送が困難であったことが報道されています。能登空港も被災したため滑走路の復旧が終わるまで空港は使用できませんでしたが、場合によってはFARPを使用して空輸活動を効率的に行えた可能性があります。
海上自衛隊ではMC-130と同系のC-130輸送機をベースにした空中給油機KC-130を運用していて、航空自衛隊ではC-130H輸送機を保有しています。もし自衛隊機にFARPを搭載すれば被災地に近い空港へ給油設備の出前を行うことが可能になるでしょう。
今後もし「南海トラフ大地震」が発生した場合、東日本大震災を上回る被害が発生する可能性も想定されています。筆者は自衛隊でもFARPを装備して国防と防災の両面で活用することが重要であると考えています。東海地域における大規模災害を想定するならば、静岡空港や浜松基地でFARPを用いた給油訓練を定期的に行うことは大きな意義があるでしょう。
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Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
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