「ほぼ全店まっ黒」ビッグモーターが不正まみれになっていった“仕組み” 伊藤忠も簡単には変えられない

130分の125事業所が不正に手を染めていった“仕組み”

 しかし、監査を終えた国土交通省は、経営体制だけが主な原因とは考えていないようです。監査にあたった物流・自動車局整備課は、こう話します。

「法令違反が、どうしていろんな事業場で出てきたか。ともすると、本社がすごい悪いことを指示して、それが全国で行われたというイメージを何となく皆さんお持ちなんじゃないかと思うんですけど、実は我々が見たところそうではない。優良な事業場は元々、別に歯止めがなくても優良なんです」

 成長が著しい企業にありがちなのが、専門知識や経験が少ない人材が社員として集まることです。急拡大で人事異動が繰り返され、門外漢の分野でノウハウがない部署の社員が駆り出されます。

「それでも社内規定であるとか教育であるとか管理がしっかりしていれば法令違反までは至らないのですが、事業場の実力が水準に達していないときには、それが修正されないまま新しい事業場で同じミスを繰り返すことが起きる」

 特に国交省が不正拡大を加速させた仕組みとして、本社の責任としたのは「利益追求の企業風土に根ざした業績目標と給与体系」です。

「じゃあ業績を上げるためには検査を一部やらないことにしましょうか、とか、そういうふうに動いてしまう」

 人材もノウハウも不足している事業場に対して、業績至上主義の本社の指導を続けることで、不正の“両輪”として転がっていく。「法令違反が起こった原因でよくあることが2つあります。一つは法令違反を起こしやすいように、事業場や人がエンジンのように動く。それを普通は管理の規定とか通報制度とかでブレーキを効かせるのですが、そっちは機能しない。この両方が合わさると、こうした事態があったんだろうなと思います」

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3月に伊藤忠らと事業再建に向けた契約を結んだ和泉伸二ビッグモーター社長(中島みなみ撮影)。

 法令順守の知識と経験を持った事業所では、不正にまみれることがなかった。それが130分の5事業所なのでしょうか。ビッグモーターの広報担当は、130分の5事業場への取材は応じられないとした上で、次のように回答しました。

「お客様をはじめとする関係者のみなさまにご迷惑とご心配をおかけしておりますことを改めてお詫び申し上げます。全店が法令遵守を守り一店舗でも違反をおこさないよう指導して参ります」

※一部修正しました(4/5 14:30)

【了】

【奇跡のビッグモーター?】130店のなかで“完全シロ”だった5店舗とは(画像)

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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